利団部屋

□雨
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ここ最近雨ばかり降る。
雨は嫌いだ。視界が悪くなって学園の入り口がよく見えないし、苛立たしさが増す。

利吉と団蔵は相変わらず会っていない。団蔵がこうして待っていても、会いには来てくれない。
いや、山田先生に聞いたところによると実は来ているらしいのだ。つい最近も寄ってくれたらしい。
だが団蔵に会ってはくれない。小松田さんから聞いているはずなのに、どうして会いに来てくれないのだろう。

避けられている、と思った。

雨はジトジトと団蔵の心を表すように、毎日毎日降り注いでいる。皆で作った巨大照る照る坊主も力を発揮しない。
授業が終わるたびに窓の向こうを見、誰もいないことに落胆し、ため息をつくのが癖になっていた。何回も何回も期待をこめて見るが、学園の扉は開かれることなくそこへあり、開いても学園長への訪問者だったり校外演習する六年生達であったり。

僕、何かしたっけ、と団蔵は毎日考えた。山田先生に「利吉さん、僕のことで何か言ってませんでしたか」などと何度も聞いた。だが返ってくる答えは「いや、何も言っとらんかったな」だけ。
どうして避けられているのか分からず、団蔵の頭はパンク寸前だ。
好きな人に理由も分からず避けられるのが、こんなにも辛いなんてことは団蔵自身も初めてで、でも解決策なんて思いつかなくて二重に辛い。



「団蔵、食堂行かない?」
「うーん、僕、もうちょっとここにいる」



いつも楽しみだった食事の時間も、ちっとも興味をそそられない。食事より何より、今は利吉のことで頭がいっぱいなのだ。

教室の窓際でぼんやりと頬杖をついたまま、外を見ていた。
雨脚は酷く、顔に飛沫が飛び散る。拭っても拭っても再びつく飛沫に、段々拭うのが面倒くさくなり、どうせ濡れるしとそのままにしておいた。

外はこの雨のせいか誰もいない。教室も薄暗い。もし誰かが団蔵がいるとは知らずここに入ってきたら、確実に驚くだろう。

利吉はフリーの売れっ子忍者だということは重々承知済みだ。だから急の仕事が入るのはしょうがない。それは何度も自分に言い聞かせている。
しかし山田先生に会いに来ているのに、なおかつ団蔵が会いたがっていると知っているのに顔を会わせてくれないのは何故だろう。
せっかく仲良くなれたのに、距離が縮まったと思ったのに。
利吉との距離が開いてしまったような気がする。
いや、もともとこの距離なんて埋まるものではなかったのではないか。埋まったと思ったのは、ただの自分の錯覚ではないか。
そこまで考えて、顔に飛び散った飛沫に混ざって、目から熱いものが零れていることに気付いた。

会いたい、という思いとは裏腹に、向こうは会いに来てくれない。
どこで仕事をしているかも分からないから、こちらから会いに行くこともできない。

そして、今日も学園の扉は開かずに終わるのだ。









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