利団部屋

□止まず
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目が覚めたら、教室ではなかった。

見慣れない教室、というよりは、あまり出入りしない教室。
ここ、どこだろう。
うっすらと目を開けると、包帯やら摘みたての薬草やら救急道具一式が目に入った。
そういえば妙に薬品くさい。それにふかふかの布団。
ぼんやりする意識の中で、医務室にいるんだと分かった。



「あれ・・・、何で僕・・・」



起き上がろうとしたら、腰に鈍痛が走った。
それまで夢と現を彷徨っていた団蔵だが、一気に現実世界に急浮上させられる。
結局、起き上がること叶わず、また布団に体を預けた。痛みに反する布団の柔らかさが心地いい。

医務室内を、何故僕はここにいるんだろうと、ぼんやり見回す。新野先生はどこかへ行っているらしく、ここには団蔵一人。
聞こえるのは今だ降り続く雨音のみ。弱まる気配もなく、むしろ勢いを増しているよう。
何だか、自分の気持ちと酷似している気がした。

そういえば朝から降っていた。いや、昨日も、一昨日も、ずっとずっと降っていた。しとしと、が、ザーザーに変わり、今やどしゃぶり。忍たまたちの声も全く聞こえない。

医務室内はシーンと静まり返り、屋根から雨粒が滴る音が、ポツンポツンと不規則に響いている。新野先生は帰って来ない。
寝返りをうとうにも腰が痛んで動くこともできない。どうしてこんなに腰が痛むんだろう。

腰を痛めた覚えなんてない。ここ最近は雨のせいで実技もしていないから、怪我をする機会なんてそうそうないのだ、腰を痛めるほうがおかしい。
たまに出会いがしらにぶつかる時はあるけれど、それでも痛めるのは額とか上半身であって腰ではない。

記憶はない。でも、痛いのは事実。

団蔵は記憶を辿った。何だか頭がガンガンする。
今朝起きた時は痛みなんてなかった。授業中も、座っているだけだったから、ない。昼休みもぼんやりしてただけだから。
今日は特に皆とはしゃいで遊ぶなんてことはしなかったから、原因はもっと別のとこか。




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