利団部屋

□霞み花
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任務が終わると、愛しい恋人のもとへ息を切らして会いに走った。入門票に走り書きし、門をくぐる。そうすると必ず門付近の木から恋人は下りてきて、出迎えてくれるのだ。

今日もそうだった。何の変わりもない、いつも通りの戯れ。
口付けをし、抱きしめあう。これがどんなに幸せなことか。
小さな団蔵の体は利吉の胸の中にすっぽりと収まる。頬ずりをしてスベスベの肌の感触を楽しんだり、むにむにとつねってみたり。
とにかく、何をしても幸せだった。今生きているのは、団蔵のためだとさえ思った。

愛してる。それ以上の想いだけど、これ以上の言葉が見つからない。だから抱きしめて、少しでも自分の想いが届くようにしていた。



「ね、ね、利吉さん、次の任務っていつ?」
「んーと、今から三日後くらいかな。でもそこへ行くまで結構かかるから・・・」



離れたくない。離れたくないけど、仕事はせねばならない。



「そっか。じゃあ上手くいくように祈ってるからね」
「ん、ありがとう」



団蔵は困ったように笑いながら、「おまじない」と言って唇にキスをくれた。
毎回、団蔵はこうやっておまじないをしてくれる。利吉にとってはこれ以上ないほどのおまじないだ。
幸せ気分に浸る。ああ、どうしてこんなに愛しいんだろうか。



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