06/29の日記

16:03
さこ団←陣左A
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「…事の経緯は分かりました」



左近がいたのは落とし穴の中。確か保健委員会は不運の集まりだと聞いていたがまさか。
そこから引っ張り出してやり説明し問題の手紙を渡す。左近は制服や髪の毛についた枝や葉、土をパンパンとほろう。まるでこんなことには慣れっこだと言わんばかり。



「忙しいところすまないね。君ならわんころくんといつも一緒にいるから解読できるかと思って」
「わんころくん?一緒?」
「ああ、ほら、いつも君と一緒にいるわんころみたいな一年生。よく喧嘩してるだろ?」



誰のことだと尋ねる左近に説明をするとみるみる顔が真っ赤に。トマト並か。いや、トマト以上か。
頭のてっぺんから湯気が見えそうな勢い。目を凝らすと見えるかも。



「だっ、誰があんなやつと一緒に!あいつがくっついてくるだけです!ホンットーにうざったい!」
「え?あ、ああ」



唾を飛ばさんばかりに怒鳴る左近はまるで自分に言い聞かせているみたいだ。
顔中から汗が噴き出して、これじゃ自分の感情を素直に言っているようなもの。

そうか左近君はわんころくんのこと…。



「アイツ高坂さんにまでご迷惑かけてたんですね。すみません」
「あ、いや、迷惑ってほどじゃ」
「今解読しますんでちょっと待ってて下さい」



失礼します、と言って手紙を広げる。

はてさて解読に何分かかるやら。
プロの忍者が五分以上見ていても解読はおろか手がかりさえつかめなかった文章だ。暗号文ではなく純粋に字が汚いだけなのにここまで苦しめられる手紙は初めて。
午後は丸々有給だから時間は有り余っている。今日中に解ければ儲けもん――



「果たし状かよ、これはっ」



――え、もう解けたの?



「高坂さんすいません、ホントすいません」
「え、え?」
「『忍術学園の用具倉庫裏で待つ』って書いてあるんです、これ。果たし状のつもりなのか分かんないですけど、こんなののためにわざわざ来ていただいて…」



早い。早いね、左近くん。あの暗号文をものの数十秒で。



「いつ?日にちは?時間は?」
「それが全く書いてないんです。…あのバカ…」



この手紙をもらったのが三日前。もし次の日に決められていたとしたら団蔵は三日間待ちぼうけを食らっていることになる。

「一発ガツンと言ってやらないと」とわざとらしく拳をパンパンと叩きつける左近のもと、用具倉庫裏へ。だって案内してもらわないと場所分かんない。

果たし状?わんころくんが私に?何で?
「何で今頃来たんだ!」って言われたら何て言い訳しよう。

考えることは沢山ある。ありすぎて用具倉庫までの距離があっという間に感じられた。何も結論が出ないまま到着してしまった。



「団蔵!」



いた。いたよ、この子。

用具倉庫裏には小さな小さなわんころくん…もとい団蔵が。そこで初めて陣左は名前を知る。


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16:02
さこ団←陣左@
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陣左は悩んでいた。というのも目の前の手紙が暗号文にしか見えないからである。



「……」



かれこれ五分ほどにらめっこをしているが全く解読できない。これ、普通の手紙だよねそうだよね暗号文じゃないよね。
手紙を開いたとき、あまりの字の汚さにいくつかの暗号解読パターンを考えたがどれも当てはまらず。故に字の汚さだけで読めないまま五分経過。

手紙を開いたまま固まっている陣左の後ろには、組頭である雑渡、その右腕の山元陣内。彼らもまたその手紙を見つめているが解読はできないようだ。
タソガレドキ忍軍の演習の休憩中。もう休憩は終わろうとしているのだが、如何せん余りにも読めない上に内容も気になるので素直にしまえない。



「…誰からもらったの?」



雑渡が尋ねる。



「忍術学園の…あの、名前が分かんないんですけど、左近くんとよく喧嘩している…」
「ああ、わんころみたいな子か」
「そうです、わんころくんです」



この手紙の渡し主には加藤団蔵と言う立派な名前があるのだが、それが分からない三人は勝手に「わんころくん」というあだ名を決めた。
確かに瞳は真っ黒だし犬のように感情は丸分かりだし、実に的確なあだ名と言える。



「へー、わんころくんか。それじゃあ絶対に解読しないとダメだな」



ニヤニヤと雑渡が笑う。雑渡のことは尊敬している陣左だが、こういう如何にも楽しんでいます的なところはちょっと。
山元陣内が手紙を見ながら「これが素の字…」と難しい顔をしている。眉間に皺まで寄せて。



「午後有給あげるから左近くんに聞いて解読してもらいなよ。彼ならわんころくんと仲良いみたいだから解読できるんじゃない?」
「別にそこまでしなくても。都合を見て行ってきますよ」



ニヤニヤニヤニヤ。雑渡は楽しそう。



「いや、今行きなさいって。わんころくんだよ?」
「だから何ですか…」
「修羅場だね〜」
「…組頭楽しんでますね?」



忍者のくせに口笛でも吹きそうな勢いで機嫌の良い上司。その横で更に眉間に皺を寄せて手紙と見つめ合っている上司。普段はとても頼りがいがある上司なのに…。

別に行く気はなかったのだが強制的に有給を取らされてしまったので、忍術学園に向かう。
この道も何度通ったことやら。雑渡がフラリと出かけるのでそれを追ってくるといつもここだ。しかも入門票にサインをしちゃえば入れるんだから不思議。
六年生のギンギンに見つからないように左近を捜す。ギンギンに見つかると色々面倒くさいから。



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