07/01の日記
16:06
さこ団←陣左C
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団蔵は「バカバカ!二人のバカ!大っきらいだー!」と叫びながら逃げて行った。陣左に対してはまだしも、左近に対しては今まで散々愛を叫んでおいて何が大嫌いだ。のろけにしか聞こえない。
団蔵がいなくなってシン…とした静けさが二人を包み込む。
「あ、あの、」
最初に口を開いたのは左近。相変わらず真っ赤だ。
「団蔵追いかけていいですか…?あんなふうにデレること滅多になくて、その、」
「ああ、いいよいいよ。存分に追っかけてきて」
「――すみません!」
バッと頭を下げ一目散に団蔵が逃げたほうへ走りだす。
青春だなあ。青い青い。
その後ろ姿を陣左は頭をポリポリかきながら見つめる。
のろけのだしに使われるとは思ってなかった。わんころくんはわざわざ私にこんなことを言うために手紙を寄こしたんだなあ。
有給を無駄遣いしてしまったかなと思っている時、後ろに忍び寄る気配に気づく。
「失恋しちゃったねえ」
「…組頭」
クツクツと笑っているのは上司の雑渡昆奈門、そして「盗み見なんて良くないと止めたんだが…」と渋い顔をしている山本陣内。どうやら最初から全部見られていたらしい。
趣味の悪い上司だ、と苦い顔をする陣左の肩を雑渡はポンポンと叩く。慰めるようなそれだが陣左は覚えている。ここに来る前に「修羅場だねぇ」と楽しむ素振りを見せていたことを。だからじとっと睨みハァとため息をついた。
「あらら、そんなにショックなの」
「違います。まさか見に来るとは思わず呆れているんです」
「だから言ったでしょう」と山本陣内が渋い顔のまま雑渡に言う。当の本人はそんなこと気にすることもなくニヤニヤ顔のまま。
「でも陣左ってわんころくんのこと好きだったんじゃないの?私の勘違い?」
――ふざけた顔をしてこの人は全く。
人のことを見ていないようで本当は細かなところまで見ているんだな。
この人にばれたら大変だとまたハァとため息をついた。
陣左は本当は団蔵を見ていたのであって左近ではない。
団蔵は左近と一緒にいることが多いから、そのせいで「左近先輩を見ている」と勘違いしたのだろう。…実際八割は左近とのツーショットだった。
あの二人が好きあっていることは何となく予想がついたけれど、
「やっぱ面と向かって言われると凹みますね」
表情は変えずに呟く。感情を少しでも出すと目が潤んでしまいそうで怖い。声は少し上擦ってしまったが。
「――で、どうするの?」
「何がです?」
「このまま諦められる?わんころくんのこと」
笑っているけれど笑っていない目で尋ねられた。包帯の向こうの表情は伺い知れない。
諦めるのが最善だろう。今の叫びで二人が付き合っていてしかも口づけまで交わした仲だと知ってしまったのだから。
それ以前に陣左と団蔵では年齢差だって十以上もある。所属だってかたや忍術学園の生徒、かたやタソガレドキ城の忍者と全く違う。会話だってあうかも分からないし、物理的な距離も精神的な距離も遠い。
陣左と団蔵が結ばれる。その確率はほぼゼロに近い。
「…諦められたら楽なんですけどね」
なのに。
心というのは皮肉なもので、頭では分かっていることでも受け付けてくれないことがある。
今がまさにそうで陣左はこの想いをどうやって昇華させるべきか悩んでいた。
報われないと分かっているのに。
ああ、きっと私は諦められずにまたここへ来るのだろう。
答えは分かり切っているのにそれでも諦めへの道を模索してしまうなんて滑稽だ。
了
―――――
以前やふーで川西左近って検索したら「川西左近 高坂陣内左衛門」って候補が出て来て、「あれ?この二人って団蔵とりあってんの?」って一気に妄想が膨らんだ←
個人的に用具倉庫裏で愛を叫んだ団蔵と川西さんのその後が気になります(;´Д`)ハァハァ
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16:05
さこ団←陣左B
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左近に呼ばれ振り向いたその顔は一瞬嬉しそうだったが陣左と目が合うなりけわしいものへ。
コロコロの黒い大きな瞳はぎゅっと釣りあがり、桃色のぷるんとした唇はへの字。暗号解読中の山元陣内並の皺を眉間に寄せ、陣左を睨みつける。
「団蔵!お前、高坂さんに――」
何て手紙渡してるんだ!
そう怒ろうとしていた左近の言葉が「バカ!」という叫びにかき消される。
「バカ!左近先輩のバカ!何でそいつと一緒にいるんだ!」
「え、…だ、団蔵…?」
「くそー!高坂陣内左衛門!お前は!」
バカ!
今度は陣左もバカと言われた。
どういうことだ、訳が分からない。隣りの左近に目配せをするが左近も意味が分からないらしく困り顔。その目配せにすら団蔵は反応する。
「ぎゃー!見つめ合うな!」
一人で地団太を踏み怒りで顔を真っ赤にしている。その姿を見て「本当にわんころだな…」と陣左は思ってみたり。だって感情をこんなにも体全体で表現して。
全く状況が飲みこめずにポカンと団蔵を見つめる二人だったが、次の言葉で今度は左近が真っ赤になる。
「左近先輩は僕のものだ!」
ボン!と隣りで何かが爆発したと思ったら左近だった。
「左近先輩は!普段意地悪ばっかり言うけどほんとは優しいんだ!ちゅーだってしたんだ!今日もしたんだぞ!」
「へ…へぇ」としか返せない陣左。何をいきなりわんころくんはのろけているんだろう。
「お前が入りこむ隙なんてないんだ!お前が!左近先輩を好きでも!先輩は!僕の!ことが!好き!なの!」
先ほどの左近のようにトマト以上に顔を真っ赤にしながら叫ぶ団蔵の言葉を聞いて、ようやく陣左は理解する。
わんころくん、私が左近君のことを好きだと思っているんだ。
一言一句区切るように叫んだ団蔵は酸素不足で更に真っ赤。隣りの左近もまさかの告白に加えキス云々も暴露され真っ赤。
言葉も紡げない左近に比べ、団蔵は陣左に物申したいようでまだ叫ぶ。
「知ってんだぞ!いつもいつも左近先輩のこと見やがって!」
「え…、いや、」
「だから言っといてやる!先輩は!僕の!もの!なの!」
そして左近の方も向き、
「なのに左近先輩は!無防備だ!陣左に狙われている自覚を持て!」
左近君は大丈夫だろうか。人間が成り得る赤を越えている。
もう目を凝らさなくても湯気が見える。
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