【パラレル小説】

□【クンシラン】 <24P>
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 冬も徐々に後退し、春の兆しがみえ始めた2月のある快晴な日、知人の八戒が俺の部屋を訪ねて来た。



 ―――八戒とは高校の時からの友人である。同じ企業に就職し、違う部所ではあるが、昔からの腐れ縁か、よくつるんでいた。
 顔の造りがそうなのか意図的なのかは知らないが、よく笑顔を浮かべる奴は愛想がいい為、同僚に好かれているようだ。
 …が、俺に言わせればよくもまぁ面倒くさがらずに構ってられるもんだ。ウザい事この上ない。
 俺だったら蹴っ飛ばしてやりたくなるが…。
 まぁそこがヤツの性分なのだから仕方がない。

 …周りは俺と八戒の事を、正反対やら不釣り合いやら騒いでいるようだが関係ないことだ。
 大体アイツが勝手にくっついてくるのだからどうしようもない。
 まぁ男のクセに、料理だの洗濯だの掃除だのよくこなす為、時折俺も世話になる。

 全くもって腐れ縁だな……。


―――今は2DKの部屋に一人住い。2階の角部屋に住んでいる。
 八戒のアパートもそんなに離れていない為、よくこうして暇な時間を見つけては、俺の所に遊びに来ていた。



「………しかし三蔵…貴方の部屋は何もないですねぇ……」

 人の部屋で勝手にコーヒーを啜りながら寛ぐ八戒は、四方を見回しながら俺に言った。

「……っせぇよ。ほっとけ」

 …翌日の会議の資料を作成していた俺は、パソコンを睨み付けながら悪態をついた。
 必要最小限なものしか置かない俺の部屋は、良く言えばこざっぱりとしているが、悪く言えば殺風景。

「…もう少し生活感があってもいいと思いますケド」

「…どうせ寝るかパソコンいじるだけの部屋だ、必要ない」

「……たしかに。休日なのに一日中そうやってパソコンと向かいあって……放っておいたらそのまま明日になっちゃいそうですね」

「……んなワケあるか…」

 人を機械かそこらと同じにしないでほしい。…心外だ。


 
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