【旅小説】
□Accident <21P>
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相も変わらず西へ向かう三蔵一行は、とある山に差しかかった。
「あぁ〜ここですねぇ。街の人が言っていた山は」
ジープを運転する八戒は、山を見上げながら言った。
…その八戒につられ、山に視線を移す他3名。
「……でぇぇ〜!!?…つかなんでこんなに険しぃワケ!?山というより自然にできた塔だな、こりゃ」
「……うっへぇ〜…こんなん越えてたら飢え死しちゃうよぉ!」
「………おぃ、他に道はないのか?」
あからさまに不機嫌そうな3人に、八戒は満面の笑顔で答えた。
「ありません」
「……………」
「……………」
「…………ったくよぉ、なんだってジープはセスナに変身できねぇんだよッッ」
と、悟浄は八つ当たり気味に、シートに軽く蹴りを入れる。
「そんな無茶いわないでくださいよ。こうして車に変身してくれるだけでもありがたいのに」
悟浄にチラリと視線を送ると、諌めるように八戒は言った。
それまでずっと山を見ていた悟空が、
「……なぁ八戒、この山越えんのに、どんくらいかかんだ!?」
と、後部座席から身を乗り出し、運転席の八戒の顔を覗き込みながら尋ねた。
「…うーん……そうですねぇ…街の人から聞いた話によると、3日はかかるとか…」
『…ええぇ〜〜ッッ!!マジかよッッ!?』
見事に悟浄と悟空の声がハモッた。
「…3日もうまい饅頭とかうまいヤキソバとかうまい餃子とかうまいタコ焼き食えねェの!?」
「あぁ〜!!3日もかわぃこちゃん見れねぇのかよぉ〜…」
『ありえねぇんだけどッ!!』
「…………っぅっせぇんだよッてめぇら!!ただでさえ苛々してんのに、耳元でぎゃぁぎゃぁ騒いでんじゃねぇよ!!」
と、三蔵が血管ぶち切らせながら振り向き様にハリセンで一喝する。
「……ってぇなぁ!!テメェの声が一番うっせんだよ!」
叩かれた額を押さえながら、悟浄が中指をおっ立てた。
「……んだとぉ!?このクソ河童!!もう一度言ってみやがれ!」
「おぅおぅ何度でも言ってやるよ、この自己中俺様坊主!!」
「…だいたい貴様はなぁ……っ」