【旅小説】
□Can I Help you? <16P>
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―――とある一日。
三蔵一行は、旅の途中で寄った街で休息中。
今日はこの街で宿を取ることにした彼等は、少し遅めの昼食を終え、宿に向かう途中だった。
「いやぁ、あの料理ちょ−ウマかったよなぁ!…あのエビチリなんかさぁ……」
「テメェは食ぃモンなら、なんだってうめぇんだろッ!――ったく、この胃袋ザルッ」
「そういう悟浄だってさぁッ!酒ばっか飲みやがってヒトのこと言えんのかよ−ッ」
「…………ぁあん?」
…いがみ合いながら通りを歩く悟浄と悟空。
すでに日常茶飯事と化したこの光景に、当の本人達はまったくお構いなしだが、大声で怒鳴りあう旅人に、行き交う街の人の視線が痛い程突き刺さる。
…さすがに目の前で耳鳴りを覚える程の大音量の口論に、耐え切れなくなった三蔵が切れた。
「…………ヤ………テメェら…ッ………ちったぁ静かに歩けんのか!!」
…額に青スジ立てながら、ハリセンが、前を行く元凶二人に振り下ろされ、スパァンと軽快な音をたてた。
「…………………ぃッッてェェッッ!!」
「…ナァニすんだこのクソ坊主!!」
「………ぅっせんだよッてめぇら!!静かに歩きやがれッ!」
「――なんだよッ!そぅぃう三蔵だってさァ」
「……俺が…なんだとぉ………?
……チャキ…
「…………あははは―、皆さん近所迷惑ですからね―…静かに通りを歩きましょうねぇ…」
ユラリ、と据わりまくった眼差しで前方の二人を見据えつつ、懐から小銃を取り出そうとした三蔵にいち早く感づいた八戒は、慌てて制止をかけた…。
「………ざけんなっ離しやがれ八戒!」
「……だめですっこんな公衆の面前で危ない物ふりまわしちゃ…っ」
「……おっやれやれぃ」
「…悟浄…?…あんま煽んなって…」
…前にも増して賑やかになった旅人4人組は、白い視線も気にせず、宿屋に消えた――…。