遙か平安の時参章
□幕参夢
4ページ/4ページ
『…今日も月が綺麗だな』
あたしは、今日も京の街を一望出来る丘へと登ってきた。
昨日の、あの人の事が気になったから…。
『ッ!』
居たー。
(?)「ッ!…お前は確か昨日の…何しに来た?」
『京の街を見に来たんだ。ここなら京の街が一望出来る』
(?)「…そうか」
とくに何を話す訳でも無いけど、何故かその人の事が気になり、毎日のように丘を登った。
『………貴方は、どうしてずっとここに?ここじゃなくてもいくらでも行く場所はあるのに?』
(?)「…行ったところでとくに何も無い。それに此処でなければ意味が無い」
『そー…貴方、名前は?』
(?)「お前に教える名などない」
『…何かもっと違う言い方してよ』
(?)「…昔は、名を呼んでくれる者が居た。今は…その名を呼んでくれる者が居ない。私は過去に私の名を呼んでくれた者が名を呼んでくれなければ意味が無いのだ」
『…じゃあ、あたしが貴方の名前を呼ぶ』
(?)「お前が?」
『そう!そうだな…紅い月の日に出会ったから紅。どう?』
(?)「どうと言われてもな」
『酷いな〜』
(紅)「お前は何て呼ぶ?」
『あたし?』
(紅)「お前の名は」
『あたしは…そうだな…今日は十六夜だから十六夜って呼んで』
(紅)「十六夜…」
遙か平安の時―幾千もの時を経て―挑戦編【紅】
終わり
.