JOJO's

□愛と言う暴力。
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俺も彼奴も、お互いに愛だの恋だのと言う質ではない。
束縛されるのも嫌だし、いちいち連絡し合うのも面倒くさい。
そもそもキャラじゃない。
そこの利害が一致しているからこそ、今彼奴と付き合っているよう
なものだ。

其れなのに。そうだったのに。









「おい、邪魔だ退けよ」
いかにも不機嫌そうな声でギアッチョはアジトのリビングに横になって雑誌を読んでいるメローネを睨んだ。
メローネは面倒くさそうに鼻を鳴らしてソファに座り直した。

「お前今日任務って言ってなかったか」

同じく不機嫌そうにメローネは尋ねた。
ギアッチョは喧しいと、小さく毒吐いて珈琲を飲みながら雑誌を開いた。
暫くお互い黙っていたが、メローネの方が耐えられなくなった。

「なぁ、ギアッチョ」

ギアッチョは生返事だけ返す。

「マジで今日非番なのかぁ?」

ギアッチョはため息をつきながら雑誌のページをめくった。

「車出したらリーダーがよぉ、アジトで待機だっつったんだよォ。クソッ 思い出してイライラしてきやがったぜ」

メローネはふぅ〜んと返事をして考えた。
ギアッチョはそんなメローネを横目で見ると、舌打ちして珈琲のカップを持って席を立った。

「んぁ?どこ行くんだよギアッチョよぉぉ〜」

「今日のテメェは喧しい。だから部屋に戻る」

ギアッチョはそう言うとリビングから出て行った。
メローネはそれを残念と呟きながら笑って見送った。
1人になったメローネは再びソファに寝そべって、雑誌を読むふりをした。

「俺今日は比較的大人しいと思ったんだがなぁ〜」

言いながらメローネはギアッチョの横顔を思い出していた。










**************************


メールの着信音で我に返ったメローネは、驚いた勢いで上半身だけソファから落ちて、そのまま頭を床にぶつけた。

「い゛ーー!」

小さく悲鳴を上げつつ携帯を目の前のテーブルからとり、内容を確認する。

(リーダーからか)

メローネは起き上がった。
そしてメールを最後まで読み終えると、叫んだ。歓喜のあまり。
同じタイミングで、リビングを抜けた部屋の一室から別の叫びが聞こえた。
叫びが聞こえてから数分もしないうちに、眼をギラつかせたギアッチョがリビングに入ってきた。
その時の勢いでインテリア植物の葉が数枚床へと散った。

「なんでテメェとナンダァ〜⁉︎しかも今からだぁぁああ?俺をなめてんのかぁぁ⁉︎」

胸倉を掴まれながらメローネは笑顔でギアッチョに言った。

「頼むぜ相棒ォ」

「うっ!オェェェエエエ」

ギアッチョは舌を出して中指を立てた。
その行為にすらメローネは胸が高鳴るのを感じた。

「フフ、ベネ」


文句と毒を散々吐き散らかしながら、ギアッチョはメローネと車に乗った。
メローネにとってはギアッチョが毒吐く方が面白いから、ギアッチョの不機嫌さとは逆にご機嫌になっていく。

「オラァ、着いたぜ」

目的地に到着すると、さっさと車から降りて、ホワイト・アルバムを身に纏うギアッチョ。

「早すぎなんじゃぁないかぁ〜?ギアッチョよぉ〜」

笑いながらメローネはパソコンを開く。
こちらも同じスタンドな訳だが、まぁ些かデカイものだから、、、
だからどうしたと言えば、つまりはメローネはギアッチョが羨ましかった。
スタンドらしいスタンドを持っているギアッチョの事が妬ましかった。
だが、じゃぁホワイト・アルバムがいいのかといえばいいや、とメローネは答えるだろう。

「ケッ、いいとこぐらしかよォ、腹たつぜぇ〜」

ギアッチョは豪邸を前に毒吐く。
メローネは笑いながら足取り軽く先に豪邸の中に入っていった。





広い中庭を通り、ホワイト・アルバムの能力で二階の窓に移る二人。
入ってからメローネは急に嫌な予感がした。

「オイ、ギアッチョ。なんかおかしくねぇか?」

「あぁ?」

「随分あっさりと室内に侵入できちまったぜ?」

ギアッチョは一瞬で意味を理解したらしく、其処からは手話での会話となった。

『罠か?』

『自分が標的だって分かってる奴ってどんなだよ』

『いってる場合か 取り敢えずテメェはリゾットに連絡しろ』

『分かった。しくじるなよギアッチョ』

『喧しい』

メローネは柱を背にして己のパソコンを開いた。
こういう時だけは役に立つ。
一方ギアッチョは、氷の粒手を軽く掌に作りそっと前進した。
メールを打ち終えた頃、ギアッチョはメローネに進むことを合図する。
メローネは頷いた。

その時………‼︎


「メローネェーーーッ!」

ギアッチョが叫ぶと同時に、まるで、ギアッチョの声を掻き消そうとせんばかりに、連弾する音が聞こえた。
メローネは何があったか把握する間も無く倒れ、視界が霞んでいくのを止めることも出来ず。
ギアッチョがメローネを守りながら闘っているのを
薄っすら考えながら、意識を手放した。

「ギ……アッ……チョ…ッ」















******************************

先に意識が戻りかけてきたメローネの耳に、小さな悲鳴が聞こえてきた。

「う゛! ……ぐぁぁぁッ……はっ、はぁ、はぁ、畜生ッ」

どうやら悲鳴の主はギアッチョの様だ。
眼を開き、身体をよじると目の前に上半身だけ脱いだギアッチョが、血塗れで唸っていた。
座ってはいるものの、何をしているのかわからない。
メローネはほぼ無意識に手を伸ばした。
すると、脇腹と頭にひどい痛みを感じた。

「ーーーッ!」

その僅かな気配で、ギアッチョはこちらに気がついた。

「起きたのか…はぁ、はぁ、この間抜け、野郎ぉがよぉ〜〜」

痛みに顔を歪めながらギアッチョはメローネに言った。

「な、何してんだよ、ギアッチョ」

「あ゛ぁ⁉︎見てワカンネェェのかテメェえはよぉぉッ」

ギアッチョは声を荒げながら己の手を凍らした。
そしてその手をそろりと傷口に当てがった。
どうやらギアッチョは傷口を低温火傷させ、無理やりくっつけているようだ。

「何ダァ?ドMにめざめたのかぁ〜?」

「うっせぇぇぞ、手当てしてやったのによぉぉ」


呼吸を荒くしつつギアッチョは又自分の身体を焼いた。

「ッ!ぐあぁぁああッ…!」

メローネはただ見ることしかできなかった。
仮にも恋人。
其奴が自分の目の前で悶え苦しんでいるのに、自分は何もできないのが、やけにもどかしく感じた。

だが、何故か高揚した。
自分が妙にムラムラと、興奮しているのがわかる。
生唾を飲み込み、ギアッチョの行為から目が離せない。


「オイ、生きてっかギアッチョ」

「はぁ…はぁ…はぁ…」

どうやら応急処置は終わったらしい。
安堵しつつメローネは辺りを見渡した。
どうやら何処かの廃ビルのようだ。

「くれぇなぁ、今何時だ」

そう言いつつギアッチョの身体を担ぐ。
普段ならこんな事をすれば待った無しで凍らされるが、意識が朦朧としているのか、ギアッチョは抵抗すらしなかった。

「今から帰るぜ、ギアッチョ」

「ぁ、…はぁ、…ぁぁ」


弱々しい返事をするギアッチョの額にメローネはキスをした。
ギアッチョの上着を拾い、歩き出すメローネ。
そんなメローネを襲っているのは、得体の知れない感情だった。









車を飛ばしてアジトに着くと、いつの間にか眠ってしまったギアッチョを抱き抱え、メローネは玄関の扉をようやく開けた。
誰かを呼べばいいのかもしれないが、何となくそれをしなかった。
メローネ本人にも真意はわからない。

「クッソ、重てェなぁ」

そう言いながらギアッチョを部屋のベッドに移し、急いでリゾットを呼びに行った。














*************************


「おめぇ本気だったんだな」

「いっ‼︎ーーーッぁあ?」

プロシュートに脇腹の治療をしてもらいながら、メローネは何のことだと言った。

「何って、ギアッチョの事だ」

「本気も何も、彼奴も俺もお互いセフレぐらいにしか思ってねぇよ」

「……お前まだそんなこと言ってんのかぁ?」

プロシュートは呆れながら包帯を巻いた。

「じゃぁ何でコッソリ帰ってきたんだよ」

「はぁ?特に意味はないぜ?」

プロシュートは終わったと言いながらメローネの背中を思いっきり叩いた。

「ッ⁉︎〜〜…ッ、感謝はするけどよぉ、俺ぁ怪我人だぜぇプロシュートよぉ〜〜」

文句を垂れながら部屋着に着替えながらプロシュートを見ると、プロシュートは煙草に火をつけながら俺に言った。

「お前にとってのギアッチョってなんだ?」

突然の質問、というわけでもないかもしれないが、メローネは答えなかった。答えられなかった。

「少なくとも俺が見るにテメェはギアッチョにベタ惚れだぜ」

「何を根拠に?」

「テメェはなぁ、メローネ、ギアッチョと居るときやたら嬉しそうだしよぉ、何よりギアッチョが本気で嫌がる事はしないようにしてるじゃぁねぇか」

確かにそうかもしれない。
しかしそれはめんどくさいことは避けたいからで、決して愛だの恋だのからくるものではない。とメローネは否定した。
プロシュートは煙草をふかしながら立ち上がる。

「ま、テメェの事だテメェでやれや。だかな、恋は盲目のままじゃ取り返しのつかねぇことになるぜメローネ」

それだけ言うと、プロシュートは自室へと消えていった。
残されたメローネは、もう一つ残されたモヤモヤを持て余しつつ、ギアッチョの部屋に向かった。


部屋に入ると、すでに処置は終わっており、楽な姿に着替えられたギアッチョが安らかな寝息を立てている。

メローネはベッドサイドに腰を下ろし、ギアッチョを覗き込む。
どこまでも無防備なギアッチョ。

「お前、何であんなに必死だったんだぁ〜?答えろよ」

呟くが起きる気配はない。

メローネはギアッチョに跨がり、布団を半分剥がすと、ギアッチョの服をずり上げた。

包帯から覗いている痛々しい傷。
ズボンのところから顔を出しているのは、昨夜じゃれ付いて着けた赤い跡。

メローネはヘソ下に手を滑り込ませ、いやらしい手つきで腹筋から胸筋へ、胸筋から首筋に手を動かす。

「ギアッチョ、お前結構簡単に殺されそうだなぁ、」

自分の声に哀愁が混ざっている感じがした。

しばらくそのままギアッチョを眺めながら考えた。
プロシュートの言っていたこと。
あの時の急な性欲の理由。
ギアッチョに対する感情。

「あー、めんどくせぇ。こんなこと考えなくていいようにギアッチョとs●xしてたんじゃねぇのかよ。」


「うっせぇ……ぞぉ…メローネ」


気がつくといつの間にかギアッチョは目を覚ましていた。
ギアッチョはゆっくりと焦点を合わせた。
そして体を起こした。

するといきなりメローネを殴った。

「ーーーッ⁉︎」

あまりの唐突さに、メローネは対処するどころか、何が起こったのかさえ理解するのに時間がかかった。

「ッてぇな、何すんっ」

頬をさするメローネは目を見開いた。
ギアッチョが自分からメローネにキスしてきたからだ。
メローネにはもはや何が何だか理解できない。
何故殴られた次がキスなのだろうか。

唇が離れ、ギアッチョを見るとギアッチョは今にも泣き出しそうな顔でメローネを抱きしめた。

「死にそうになってんじゃねぇよ このクソ野郎ぉぉがよぉぉッ」

メローネは分からないながらもギアッチョを抱きしめ、頭を撫でた。

「でもギアッチョのおかげで助かってるぜ?」

「おッ、俺の、ぁ 足を…ッ、引っ張ってんじゃねぇ……ッ!なめてんのかぁッ」

「悪い、マジ悪かったよ」

メローネは気付いた。
今、自分はなんて素直なんだろうと。
ギアッチョは泣きながらメローネの肩にぐりぐりと頭を押し付けた。まるで甘えているように。

「なぁ、ギアッチョ、もっかいキスしよぅぜ……、な…だからこっち向けよ」

「い、いや…ズビッ…に、決まってんだろ、がぁ…グスッ!」

メローネはギアッチョの額ににキスをして、両手で頬をつつみ、瞼にまたキスをする。
涙を舐めとり、また瞼にキスをする。

「ギアッチョ…」

名前を呼びながらメローネはギアッチョの唇に深く口付ける。

「ん、…ふぅ…はぁ、ぁん…ッ」

唇を離すと、ギアッチョが睨んでいるのがわかった。

「ギアッチョ、俺の事嫌いか?」

「あぁ、嫌いだ。」

「……ギアッチョ、今からお前の好きなようにしていいぜ」

「はぁ?」

「今、すげぇ気分がいいんだ。」

ギアッチョはポカンと口を開けていたが、すぐにまたメローネを睨んで、これまたメローネを殴った。
ギアッチョはベットの、いつも足を置いてある方にメローネを押し倒し馬乗りになった。

「なら存分に殴らせろォッ!」

未だ涙が止まらないギアッチョ。
メローネはそんな彼を見て、微笑んでギアッチョの頬に手を当てた。

「ご自由に。」

ギアッチョは最初に肩か胸かわからないところを殴った。
次に怪我とは逆方向の鳩尾を殴った。

なんだかんだいいつつ怪我のところは避けようとするギアッチョを、メローネは愛おしく思った。

最後に顔面を思いっきり殴り、ギアッチョは傷口が痛むのか、殴るのをやめて、傷口を抑えた。

一方殴られたメローネは口の中を切ってしまい、おいしくない味を噛み締めながら思った。

(なぁギアッチョよォ、こうやって傷つけ合うのも俺たちの愛情表現の一つなのかもしんねぇぜ?少なくとも俺はそうだ。愛おしいお前を犯し壊してぇよ……)

メローネはやっと自分のこの気持ちに素直になれた気がした。
殴られた部分がじくじく痛むのを感じつつ、メローネは黙って寝そべったまま両腕をギアッチョに向けて広げた。

ギアッチョは黙ってメローネの上に寝そべって、頭をメローネの胸に押し当てる。

「痛ぇか……傷。」

「ギアッチョの方が重症だからなぁ、俺の口からは痛ぇとはいいずれぇなぁ」

「……そぉかよ」

ギアッチョは泣いたのと怪我のでの体力がないからか、気がつくとまた眠りについていた。
メローネは微笑み、ギアッチョを抱き込んだ。




この気持ちに名前をつけるのはまだ先でもいいきがすんなぁ。


今は痣だらけのままでいい。


「愛きてるぜ、ギアッチョ」


メローネはギアッチョにキスをした。








END

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