〜if〜

□進撃の巨人
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「エレンは兵長の事好き?」

「ふぇ!?」

 私の突然の質問にエレンは男とは思えない情け無い声を出した。
真っ赤になるえレンを横目に私は窓の外にある空を見た。

「羨ましいな」

「は?」

「だって人を愛してる時って、自分はまだ生きてるって、私もれっきとした人間なんだなぁって、なるでしょ?」

「・・・」

 エレンは困った顔をして俯いた。
私は続けた。

「エレンは巨人にもなれるから、余計に迷走しそうだね」

「・・・痛いとこ突くなぁ・・・」

「ごめん。でも、だからこそ何かを感じて生きる事が出来るのよ」

「・・・まるで自分は何も感じて無いみたいな言い方だな」

「はは、別に何も感じないわけじゃないのよ?」

 私は自分の頬をつねって見せた。
エレンはぎょっとして私を見た。

「何やってんだよ!!」

「いてて、」

「当たり前だろ!?」

「だから、痛みだって感じてるんだってば」

「おまえなぁ・・・」

 エレンはわしゃわしゃと自分の頭を掻いた。
私はそんなエレンに微笑んでいった。

「だから、私が生きてるって感じるのは、自分が痛いと思ったとき。」

「え・・・」

「だから巨人と戦う。戦えない時はこうだっ!!」

 私はエレンに自分の腕を、上着を脱いで見せ付けた。
エレンの顔の血の気が急激に引いていくのが分かる。
私は自分で傷付けた腕をそっとなぞって、エレンに言った。

「手首はばれると思って、腕にして見ました」

「見ましたじゃねぇよ馬鹿!!!」

 エレンは怒って私の腕を握って傷を見た。

「こんな残るまで深く傷付けんなよ!」

「そんぐらいじゃないと痛いかなんて分からないんだもん」

「そもそもリストカットなんかするな」

「無理言わないでよ。これは私が生きてる証なんだから」

「・・・じゃぁこれは俺がリヴァイ兵長に報告する」

「冗談でしょ!?絶対止めてよ?!」

 今度は私の血の気が引いていき、エレンの腕を握った。
エレンは私の腕を振り払っていった。

「こんな事して支障が出たらどうすんだよ!!」

「出ないようにちゃんと計算してるわよ!!」

「もしもがあるだろうが!!!」

「私の話聞いてた!?何の為にこんな所にやったと思ってんの?!見つからない様にする為なんだってば!」

「じゃぁ何で俺に見せたんだよ!!」

「・・・エレンなら、分かってくれると思ってた。」

「そんなの分かるわけ・・・」

「リヴァイ兵長の事が好きなエレンになら、分かってもらえるかもって思っただけよ!!」

「・・・え」

「そうよ!悪かったわねッ!!人間として同じ奇行種のあんたになら理解してもらえるかもって思ったのよ!!」

 私は怒鳴って部屋から飛び出した。
泣きながら、声を殺しながら、走った。
途中誰かにぶつかったようだが、そんな事は気にも留めなかった。
 部屋に駆け込んだ時には涙はもう出ていなかった。

「ごめんエレンさっきの嘘。勝手に傷ついて涙が流したかっただけ。それだけなの」

 私はまた窓の外を見つめた。

「あ、おにぎり雲だ。サシャが喜びそう」






― 一方その頃エレン ―


「なんなんだよ・・・」

 俺はその場に座り込み、うな垂れて、さっき言われた事を思い出していた。


『同じ人間として奇行種のあんたになら理解してもらえるかもって思ったのよ!!』


「同じ・・・奇行種」

 俺は呟いて目を閉じた。
(そらそうか。男なのに好きなんだし、ある種奇行種かもな・・・)

「はは、でも言われるとやっぱきついな・・・」

 呟いた時だった。
自分の声に反応した人がいた。


「何がきついんだエレンよ」

「!!??リヴァイ兵長!!」

 顔を上げると、そこには仁王立ちするリヴァイ兵長がいた。
俺は急いで腰を上げて、胸に手を当てた。
リヴァイ兵長はうるさいと俺を軽く蹴った。
条件反射ですみませんと謝る俺に、リヴァイ兵長は言った。

「何かあったのかエレン」

「え・・・?」

 リヴァイ兵長は俺の顔を自分に向けさせて、目を合わせてきた。
俺はとっさに目を逸らした。

「いえ。何もなk」

言い終わる前にまた足に激痛が走る。
あまりの痛さにうずくまる俺。
そんな事はお構い無に、リヴァイ兵長はかがんで俺のジャケットの襟を掴んで言った。

「俺は嘘を付いて良いとお前に教えたか?エレン」

「す、すみません・・・」

「謝罪はいらんからさっさと話せ」

「・・・」

 俺は黙ってしまった。
自分から報告するとか言っておきながら、いざとなったら本当に話していいのか分からなくなってしまった。

「すみません、今の俺の口からは言えません」

「・・・そうか」

 察してくれたのか、リヴァイ兵長はそれ以上は詮索しないでくれた。
 俺の襟から手を離したリヴァイ兵長。
俺は離れて行く手を反射的に掴んだ。

「あ、」

「何だエレン」

「す、すみません・・・その、」

 言葉を濁す俺にリヴァイ兵長はさっさとしろという。
俺はダメ元で言ってみた。

「俺をぎゅって・・・してくれませんか?」

「・・・・。」

 リヴァイ兵長は黙って、というよりは固まってしまった。
俺は慌てて言った。

「嫌ならいいんです!気にしないでください」

 掴んでいた手を離した。
リヴァイ兵長は辺りを見回してから、今回だけだ、そう言って俺を抱きしめてくれた。

「エレン、抱きにくい。俺の膝に乗れ」

「は、はいっ!」

 俺はリヴァイ兵長の膝の上に乗って、そっと手を回し、首を兵長の肩にうずめた。
リヴァイ兵長はそっと俺の頭を抑えた。

「兵長、」

「なんだ」

「好きです」

「・・・」

「これからも、ずっと」

「あぁ・・・。」

「だから、その・・・」

「なんだ」

「今度の任務の時も、きっと、必ず、」

 いい終わらない内に、リヴァイ兵長は俺の口をリヴァイ兵長の唇で塞いでしまった。
唇を離すと、頭を撫でて言ってくれた。

「そんな事よりも自分が殺されない様にお祈りでもしてろくそガキ」

 俺は涙を流した。

「は、はい゛ぃ!!」

「汚ねぇな」

「す、すみ゛まぜん゛」

「・・・ったく。お前らガキは、どいつもこいつも」

((ぶつかったあの女といい、エレンといい、今はそういう時期なんだろうか・・・そろってめそめそと・・・それでよく軍に残れたもんだ))


((でもまぁ命を粗末にするよりは・・・そういうのも))



「悪くない」



 リヴァイ兵長の優しさで、確かに俺は生きている事を、人間である事を、認識して、噛み締めるんだ。




END

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