-夢編-

□作詞作曲in準備室
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良い曲にしたい…良い歌詞を書きたい…なのに。
…出ない。うまく紡ぐことができない。
何度書いても、繋がらなくて、バラバラで…暗い。
視界が滲んできた。


「っ、ぅ」


泣いたって意味ない。
目を袖で拭って、またペンを走らせる。
おじいちゃんからもらった万年筆。
作詞の時はこれと決めている。
でも…何度もペンが止まって、滲んで点ができる。
その上に涙が落ちて、さらに広がった。


「なんで泣いとるん?」

「な、なんでもないよ!!目にゴミが」

「見してみ…んー、なんも入ってへんように見えるけど…逆さ睫毛?」

「もうだいじょうぶだから」

「せや、ちょお聴いてや」


あ…サビか…なんか不思議…同じテンポなのに、また違った曲が見える。


「また新しいね。書き甲斐があるよ」


不意に、財前くんの顔が曇った。


「なぁ…いや…その…」

「ん、なに?」

「そない辛いなら、無理せんでええよ?」

「え?」

「基盤なら俺も書かれへんわけやない。もともと俺がやっとったわけやし」

「別に大丈夫だよ?財前くんは作曲に専念…」

「できるわけ、あらへんやろ…お前が泣いとるんにほっとけるほど、俺は薄情やないで?」

「や、これは自分に実力が」

「ある。十分、ある。今がスランプなだけやから、メロディー気にせんと書きや。こっちで合わせることもできるさかい」

「でも」

「俺らかて、軽音部なんやで?仲間やろ」


でも、これはやると決めたこと。
決めたことは、やり抜きたい。


「うん、大丈夫だよ。今まで書き貯めたところ見直して、組み立ててみる。財前くん、Cメロ作り終わったら手伝ってくれる?」

「…!!おぅ」
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