-BL編-


□近すぎて遠い。
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卒業式。ついに、来た。
これが終われば、俺は大阪を発つ。
行く先は東京。高校が都内やった。オトンに騙された。
『京都やから受けな』て言われたから受けたんに、後から『違った、東京やった』なんて言われたら、俺はどないしたらええねん。

…小春は府内トップの進学校に首席で入学するらしい。さすがは小春や。

俺が京都やのうて東京やったことを伝えたときも、『きっとユウくんにとってはベストな道や。気張っていってきなはれ。いつでも、待っとるわ』て言ってくれた。

――――離れとうない。

壇上の小春と目があった。刹那、沸き起こる感情。寂しい、辛い、手離しとうないって。

そろそろ呼ばれる。壇上への階段の下で、小春の席を再確認した。

「――一氏ユウジ」
「はい」

決められた動きで受けとり、振り返る。小春の席に視線を向け、目が会うのを確認した。
降壇する階段の途中、気がついたら口を突いて出とった。

「小春、好きや」

本当に小さな声の、小さな告白やった。誰の耳にも届かず、少々張り詰めた空気の中に溶けていった。

式後の教室は、騒がしい。みんな手紙交換したり、メアド聞いたり、写真撮ったりしとる。

俺と小春は、それこそ自然に、肩を組んで、教室の隅に居った。

「ユウくん、楽しかったな、この一年」
「どないしたん、小春。しゃべり方おかしいで?」
「高校デビューするんや。もうこのままじゃ居られへん。少し足を踏み出して、男らしくせなあかん」
「小春はそのままでエエんや。何を変わる必要があんねん」
「……変わらな、あかんねん」

その言葉は、いつまでも俺の胸に引っ掛かったままで。
そのときの小春の、顔こそ見えないものの、声だけでわかる。

―――俺ら、両想いやんか。

けど、小春が言わんのなら、俺も言わん。

両想いやった。

この事実があれば、それだけで充分っちゅー意味や。今の日本は、そういう恋愛に風当たり強いしな。俺は構わんけど、小春のためにならん。

「なあ、小春。辛いとき、メールくれるか?」
「…ええよ。ほな、ユウくんは嬉しいときメールくれるん?」
「…ん。ほな、あとひとつだけ、約束や」
「約束?」

あかん、目の前が滲みよる。
この言葉、言おうかどうしようか、さんざん迷ったんや。けどな、言わな後悔するやろ?

「寂しなったら、一心同体少女隊修行、思い出そな。俺と小春は、離れてても一心同体や。いつも一緒やから…忘れんといて」

情けない。俺としたことが…泣いてまうなんて。
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