-BL編-
□甘えた。
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最近、忍足が甘え症だ。
「景ちゃん、けーいちゃん」
「なんだ」
「今日家行ってもエエ?」
「…またか」
「なぁ、エエやん。泊めてや」
「別に構わねぇが…もう三日連続だぞ?」
「別にうち放任主義やし。気にせんでエエって。ほな、泊まり行かせてもらうわー」
…なにかおかしい。家についても、この調子は変わらずで。忍足との付き合いは2年程になるが、こんな状態は今までなかった。
しかも、景ちゃんてなんだ、景ちゃんて。
「んん…けーいちゃん♪けーちゃん、けいちゃーん」
「んだよ。何度も呼ぶな鬱陶しい」
「すまんすまん、景ちゃん♪」
「…はぁ」
家にくると、ほぼ俺様のベッドの上で過ごしてる。
枕を抱き枕状にして「景ちゃんの匂いするー」なんて言い出した日には頭をひっぱたいてやった。が、それも意味を為さず、数十分置きに言ってやがる。
「景ちゃん、けいちゃーん」
「んだよ」
「こっち来て、頭撫でてやぁ」
「しょーがねぇなあ、うちの天才は。他校に見せられねぇや」
「他の奴等になんか見せへんて。景ちゃんだけやから」
…ん?ああ、そういえば…こうやって甘えてくるのは二人だけの時か…。別に俺様じゃなくても、他の奴に……………それはそれで嫌だな。
…あ?俺、毒されてねぇか?…まぁ、それはそれで……………。
「わかった。俺様にだけ甘えてろ。他の奴等には見せるな」
「えへへー、見せへんて…んー、景ちゃんの手ェ、大好きや」
「えへへー、ってのやめろ。お前がやっても気持ち悪い」
「景ちゃん酷いわぁ」
「黙って撫でられてろ」
「はーい」
最近知ったが、忍足の髪は思ったより細い。細くて、しなやかで、指通りが良い。指を差し込んで撫でてやると、気持ち良さそうに目を細める。時々ちらっと見上げるのが猫のようで、妙に愛着がわいてしまう。まあ、切れ長の目が助長しているのだろうが。