-BL編-


□甘えた。
4ページ/5ページ

浴室の扉を開けると、真っ白な視界に忍足の声が響いた。

「あ、景ちゃん?アヒル隊長どこやったか知らん?」
「アヒル隊長?…ああ、お前が持ってきたオモチャか。それならそこの戸棚だ」
「んー?ここか?あ、あった!アヒル隊長ー」

アヒルを湯船に浮かべ、何やら満足げにつついている。
…ガキか。

「忍足…お前、中学生だろ?」
「せやでー?」
「もうちょっと大人びても良いんじゃねぇか?」

正直な感想を言っただけだ。
…否。普段の忍足と違いすぎて、対応に困った俺様の、逃げの台詞だ。
この言葉が、こんなにも重大だなんて思わなくて。

「…跡部も、こっちの俺の方がエエん?」

一気に抜けた子供っぽさ。いつものような、大人の色香を纏った忍足。
でも、その瞳は悲しげで、声には憂いが含まれていた。
その瞳に、声に、俺は弱い。どうしても、好きだから、そんな表情、させたくない。

「そんなことはいってねぇだろ。ただの売り言葉に買い言葉だ。気にすんなよ。俺様はどんなお前でも好きだ。覚えとけ」
「…ほんまに?」
「ああ。俺様は嘘なんざつかねぇ。安心しろ」
「…よかったぁ」

緩んだ顔で笑って、またアヒルをいじり始める。
俺様はなんでこんな奴に惚れてるんだか。男だし。俺様よりでかいし。ガキだし。

「どんな俺でも好きなんやて。アヒル隊長、よかったわぁ」
「そろそろこっち来い。髪洗ってやるよ」
「ほんま?やったー、景ちゃんの洗い方めっちゃ好きやねん」
「そうか。昨日みたいに寝るなよ」
「はぁーい。今日はアヒル隊長洗いながらでええ?」
「それで寝ないなら」
「わかったー。アヒルたいちょー、今日は洗うですよー」

… だ れ だ お ま え 。
こんなの、俺様が知る忍足じゃねぇ。なんだこのショタっ子気質。可愛いじゃねぇの。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ