置き場

□幸村と真田と。
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いただきます、と各々口にしつつ食べ始める。

「あ、今日ね、友達に羨ましがられたよ」
「ん、どうしてだい?」
「二人と住んでるって言ったら」
「「え?」」

真田と幸村は、顔を見合わせた。

「かっこよくて、勉強できて、スポーツもできる男の人と一緒に住んでるのは羨ましいんだって」
「まあ…女性の理想とは、そうだろうな」
「暁はどう思う?」
「わたしはねー…そういうことは抜きで、二人だから楽しいんだと思うな。だって、入ってすぐは二人のこと全然知らなくて、精ちゃんのこと女だと思ってたし、弦ちゃんのこと社会人だと思ってたんだよ?当てはまると言えば、かっこよくてってところかな」
「だってよ、真田。かっこいいってさ」
「むぅ…」
「あ、照れた」
「弦ちゃんのそういうところかわいいよね」
「か、かわいいなどと男に言うな!」

ムキになる真田に対し、二人はいたずらっ子のような笑顔を見合わせる。

「まあふざけるのはこれくらいにしようか」
「いい加減にしてくれ…」
「ごめんごめん。弦ちゃんっていじり甲斐あるからさ、つい」
「うん、わかる。俺は昔から思ってたけどね」
「中学時代もそうだったではないか」
「そっか、二人は中学からなのか」
「まあ、そうだね」
「正確には小学校6年だ。初めて試合をしたのが、だがな」
「へえ。やっぱ精ちゃんが圧勝?」
「お、よくわかったね。大体は真田だと思ってるみたいだけど」
「なぜわかった?」
「んー、今の雰囲気、かな。精ちゃんの方が強そう。ん、ごちそーさまでした。食器片付けるね」
「じゃあ真田は風呂洗ってくれるかい?俺は暁を手伝うからさ」
「わかった」
「精ちゃん、よろしく」
「うん。暁は洗う方よろしく」
「はーい」

カチャカチャと洗い物を済ませると、ズボンの裾をまくったままの真田が帰ってきた。

「あと20分もすれば入れるだろう。嵯峨野、洗剤が切れたのだが、替えはあるか?」
「あ、どうだろ?探してくるね」

嵯峨野が風呂場の方に消えると、幸村から口を開いた。

「ねぇ、真田。暁のこと、どう思ってる?」
「身のこなしも良く、家事も出来る、良くできた人であると思うが」
「うん、同感。でさ、俺さぁ…困ったことに、暁を恋愛感情で見られないんだ。なんかもう娘みたい」
「それは俺も同感だ。嵯峨野に変なやつと結婚してほしくないと思う自分がいる」
「結婚は飛びすぎだけど…俺もそうなんだよなぁ」

参ったなぁ。なんて言いながら、幸村は天井を眺めた。

「ま、いざとなったら俺か真田がもらっちゃおうよ。それなら安泰」
「なっ…」
「じゃ、俺は暁を手伝ってくるね」

そう言い残し、幸村は風呂場に消えた。
取り残された真田は、ただ呆然としていた。

「幸村、本気か…?」
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