置き場

□切原と柳と。
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ほぼ毎朝、嵯峨野はドアをノックする。

「柳さん?起きてます?」
「ああ。何か用か?」
「失礼しまーす。あのー、赤也が起きなくて…起こしてもらえます?」
「またか…わかった。起こしてくる」
「今日は和服なんですね。よくお似合いです」
「この方が寛げるからな。今日は休講日なんだ」
「いーなー。私たちは10時からなんですよ〜。あ、じゃあお昼冷蔵庫に入れときますね。お弁当につめる前でよかったです」
「ああ、すまない。伝えるのを忘れていた。ふむ…今度から表にして貼り出そう」
「あ、いいですね。じゃあ赤也お願いします。お弁当作りますんで」
「ああ、任せろ」

嵯峨野は台所へ。柳は、切原の部屋へ。ベッドのすぐ横に立ち、声をかける。

「赤也、起きろ」
「…Zzz」
「赤也」
「ん…」

なかなか起きない切原に、柳は強行手段に出る。

「赤也、さっさと起きないか」
「んぐぅ…柳さん、重いっすよ…」

寝ている切原の上に、平然と座る柳。

「起きないお前が悪いんだ」
「布団剥がすとかあるじゃないスか」
「この間、布団を剥がしても寝ていたのは誰だ?」
「う…俺、デス…」
「分かればいい。明日からはちゃんと起きろ。暁を困らせるんじゃない」
「はーい。あ、起こしてくれてありがとッス」
「暁にも礼を言うんだぞ?もう弁当まで作ってくれているんだ」
「マジっすか!やっべ、俺もなんかしなきゃ!!」
「それなら、授業予定を時間割りのようにこのノートに書いておいてくれ」
「わかったッス!!」

リビングの机で切原はペンを走らせている。台所では嵯峨野が弁当をつめ、柳はお茶を淹れている。

「でーきた。柳さん、冷蔵庫の左下に入れておきますね」
「ありがとう。まだ時間があるだろう。一息つかないか?」
「あ、緑茶ですか。いただきます」
「柳さーん、これでいいッスか?」
「ああ、ありがとう。あとで整理して貼っておく」
「これで予定が把握できますね。あ、赤也、今日は忘れ物しないでよ」
「わかってんよ!ノートと教科書、資料集、筆記用具!!」
「データ集は?」
「ああっ!!忘れてたっ!!とってくる」
「まったく…赤也はそそっかしいな、相変わらず」
「ですねぇ」

過去、テニス部に所属していた三人。一人はデータ、一人はエース、一人はマネージャー。
たまたま同じ大学で、同じ部屋をとった。この部屋は、柳の他二人が住んでいたが先日転居し、偶然か必然か、その空きに嵯峨野と切原が入ったのだった。

「暁も、仕事の出来は衰えていないようだな」
「まあ、嫁修行ですから」
「そうか」

二人は湯飲みを傾けた。現在、7時30分。
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