-夢編-

□中と外の差
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「あの…明日で付き合って一月になるのですが、家に来てみませんか?」

顔を真っ赤にした私の紳士こと柳生くんは、そんなことを言い出した。ポカンとする私に、柳生くんは全力で、あることを否定しにかかる。

「ああああ!ち、違うんです!!いっ、いかがわしいことではありませんので悪しからず!」
『うん、知ってるよ。柳生くんは、そういうこと苦手だもんね』
「あ、はい…いやはや、すみません、大声を出すなどと…」

一人で焦って一人で落ち込んで。全く、可愛いなぁ、柳生くんは。

そう、私が柳生くんに惚れた理由のひとつは、彼が可愛いということ。極悪詐欺師仁王と組まされて色々やらかしているようだが、彼の素はとても純粋だ。告白も、なぜか文通から始まって一月してからだった。付き合い始めてしばらくしてから、手を繋いだらすごいビックリした顔をして、顔を真っ赤にしちゃってさ。こっちがビックリしたっての。

『明日ね。親に言っとくよ』
「恐縮です」

こんなやり取りをしたのが、今からざっと25時間前。

な ん だ こ の 状 況 は

『あ、あのー…柳生くん?』
「ああ、そこら辺座ってください。ベッドなり椅子なり床なり、どうぞご自由に」

ニッコリ。普段は眼鏡に隠されている切れ長の瞳が細められ、普段から見る薄い唇が綺麗な弧を描く。美しい。

しかし。この彼の体勢はどうしたものか。

部屋に入るなりネクタイを外し眼鏡を外した(もちろん規定の位置には置くのだが)。さらにはワイシャツのボタンを二つ目まで開け、一手に前髪を掻き上げた。ふと目が合えば、普段見ない表情でニッと笑った。そしてベッドを背にして座り、ローテーブルに足を乗せて雑誌(なのか?)をめくっているのである。客人そっちのけ。あ、一応お茶は出してある。

そんな彼にどう対応していいか困ったので、とりあえず隣に座った。

「おや、可愛らしいことをしますね」

なれた手つきで肩に手を回してくる。

…あ、ああ、貴方は誰ですか!?

私の思考回路は爆破寸前。
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