-BL編-


□扉一枚
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力ずくの均衡は俺が引くことで崩れた。扉の向こうから、ため息が聞こえる。

「謙也」
「………」
「謙也」
「………」
「謙也」
「うざい」
「泣いとるやんか」
「うっさい。泣いて、へん」
「なぁ、聞かしてくれんくてエエから、今だけ、慰めさして。謙也が一人で泣いとるなんて耐えきれんわ。」
「………」

―――ず、ずるっ

ドアに寄りかかり、ずり落ちる音が聞こえた。俺も同じように座った。

「…見てもうてん」
「何を?」
「ユーシ…女の子とおったやろ?」
「女の子と?」

なんやそれ。身に覚えないねんけど。

「一緒に保健室いっとったし…」
「………………………………謙也、それ、長めのポニーテールの子やろ」
「やっぱり、そうやったん?」
「…ぷっ、くくっ…謙也、あれな…くくっ」
「な、なに笑っとんねん!!」

謙也…可愛えやっちゃなぁ。

「あれは宍戸や」
「宍戸…?」
「おったやろ?『どらぁ!』って叫んどるやつ」
「…あ」
「捻挫してたし、体調悪そうやったから保健室運んだんや」
「なんやそれ…うわ、俺…」

ドアの向こうに、愛しい人。この三センチに満たない薄い板が、どうしようもなく邪魔だった。立ち上がって、ドアをもう一度、ノックする。

「謙也、あけてや。仲直り、しよか」
「侑士…っ」

勢いよくドアが開いて、瞬間的に抱きつかれた。後ろの壁に頭をぶつける。痛い。痛いけど、謙也の心の方が痛かったんやろな。

「ごめんな、謙也。不安にさして」
「ゆ、ユーシ、ごめ」
「落ち着きや…大好きや、謙也。」
「侑士…もう、嫌やで?こんなん」
「わかっとるわ」

あやすように背中を撫でて、落ち着かせる。ホンマに可愛えやっちゃ。俺はお前しか見てへんて、昔から言うとるやん。…昔っていつかて?そんなん…ふっ、わかるやろ?

―――お前が生まれた、その瞬間から。

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最後、扉関係させたかった。ま、いっか。

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