-BL編-


□扉一枚
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-謙也が見たもの-

岳人と話してたら、侑士を見失った。一瞬のうちに心細くなり、慌てて探す。コートの外れで、その背中を見つけた。

「あ!侑…士?」

侑士の腕に抱かれる誰か。顔は見えないが髪は長く、縛られている。声をかけるのは憚られ、後ろからそっと着いていった。

そのまま校舎に入り、行き着く先は保健室。会話があったようだが、自分の心臓の音に掻き消され、聞き取れなかった。開け放されたドアから滑り込み、物陰に隠れる。ギッ、とベッドの軋む音が聞こえる。

「ったく、無茶しよるからやで。おっと、怒鳴んなや?静かにしぃや。体調崩しとるんやさかい、大人しく寝とき」

なんでや、なんやねん侑士…やっぱ、女の方がエエん?俺なんか…迷惑?同情?揉めると面倒やから?俺…俺、侑士のこと…ホンマに好きなんに…侑士には…迷惑?

「っ、く」

自然と溢れる涙は、止まらなかった。必死に嗚咽をこらえるも、暴れる心臓に酸素は足りなくて。

「誰かおるんか?大丈夫か?」

侑士の声が聞こえて、慌てて保健室を飛び出した。

「謙也?ちょ、謙也!!待ちぃ!!謙也っ!!」

その声を聞かず、校庭まで走り抜けた。コートに鞄を取りに行こうかと迷ったが、面倒だ、と家まで一気に走った。

数分後、鞄を二つ持った侑士が息を切らせて帰ってきた。

「っ、謙也、なんで」
「うっさい…侑士は…俺なんかより…」
「なぁ、謙也…」

いつも俺をなだめるのと同じ、そっと抱き寄せられる。侑士の腕の中は、優しくて安心できるから、めっちゃ好きや。けど、今は気持ち悪い。他の奴を抱いた腕でなんて、嫌だ。

「もうユーシなんか知らん!しねっ!!」
「ちょ、謙也!!」

軽く突き飛ばし、部屋へ駆け込んで鍵を閉めた。


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ここから冒頭に戻ります。。
いやー、なんか謙也が…侑士が…でも二人共なんやかんやでラブラブだったらいいなー…
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