リク応答
□距離感
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今日も、玄関を開ければそこにいる。
『ブンちゃん、おはよ』
「はよ。てかいいかげんブンちゃんはやめろぃ」
『えー?じゃあ丸井?』
「それもなんかなぁ…ブン太って呼べよ」
『えー?ブンちゃんがいい』
幼馴染みの、高梨りこ。毎朝、俺を迎えに来てる。朝練があっても、必ず居る。いつも、居る。前になぜ居るのかと聞いたが、『えー?習慣?』と返されたので、聞くだけ無駄だと思いやめた。
「…これやるよ」
『お、ブンちゃんがガムをくれた。なにかいいことあったの?』
「いーや?ただの気分」
『珍しいこともあるもんだねー』
あげたガムを放り込み、また喋り出す。俺もよく喋るが、こいつはもっとよく喋る。そりゃもううるさいくらい。
「お、今日も夫婦で登校かよ」
「夫婦ってなんだよ。ただ家が隣なだけだ。な?」
『うん』
ほぼ毎日からかってくる木村。なにげに親友。
「なんだー、まだ夫婦じゃなかったかぁ」
「まだってなんだまだって」
「あ、りこー、おはよっ!」
『あ、おっはよー!じゃ、ブンちゃん、木村くん、またね』
「おー」
「高梨さん、またなー」
隣のクラスに消えていく背中を見送りつつ、なんとなくため息が。
「…はぁ」
「なぁ、丸井。おまえさ、高梨さんのことどう思ってんの?」
「んー?幼馴染み」
「…だけ?」
「おう。それがどうかしたのか?」
「いや、興味本意」
それだけ言って、なにかを考えるように木村が席に戻る。
りこは…幼馴染みだよな。気が合うし、仲良いし、居心地がいい。それがどうかしたのか?今まで通りの生活を繰り返すだけだし…特にこれといってないしな、うん。