置き場

□小石川健二郎と。
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「おー、嵯峨野。俺とや。頼りなくてすまんなぁ。」
『あ、健ちゃん。頼りなくなんかないよ。よろしく!』
「おー、よろしゅうなー。」

人の良い笑顔でニコニコとする小石川に、嵯峨野は安心していた。

『四番だから最後だねー。』
「なんや驚かし役は白石と忍足やて。」
『白石とか死に装束で出てきそう。』
「同感や。」

一組目の後ろ姿を見ながら、ポツリと一言。

『「あの二人、絶対ビビらんわ」』

一組目はなんと石田、千歳ペア。なんとも肝の座った二人だ。肝試しも意味は皆無であろうと思うと、驚かし役が不憫に思えてくる。

「白石たち、一組目で心折れんとエエけど。」
『折れそうだよねー…。』

二人同時にため息を吐き、顔を見合わせて笑った。なんとも和やかな空気である。

「ほな、そろそろ行こか。懐中電灯は俺が持つわ。」
『うん、よろしく。』
「肝試しらしく、手でも繋ぐか?」
『あ、いいね。』

自然と手を重ね、歩き始める。月が明るく、懐中電灯無しでも十分足元は見えた。

『明るいねぇ。肝試しももったいないね。お月見したらいいのに。』
「せやなぁ。お、満月に近いんとちゃうか?」
『わー…って、ウチ乱視だからよくわかんなかった。月が三重に見えるよ。』
「コンタクトとか入れてへんの?」
『黒板は見えるからいいかなって。コンタクト高いし。あ、眼鏡は持ってるんだけどね。』
「そういえば、授業中は時々かけてるん見るわ。」

そんな会話をしていると、どこからか声が聞こえた気がした。

『健ちゃん…。』
「大丈夫やて。」

きゅっと力の入る手に、小石川は笑った。
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