置き場
□忍足謙也と。
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『四番って誰?』
「俺や俺。四番とか最悪やわぁ…待ち時間長いやん!」
『え?不吉とかそうゆう方向には行かないの?』
「不吉?ああ、ほんまや。」
『アホかい。』
小さくボケとツッコミをかまし、待ち時間を潰す。忍足は待つのが苦手だ。
そこに、ものすごく不機嫌な財前がものすごく不満そうに入ってきた。
「先輩らうっさいっすわ。雰囲気ぶち壊しですやん。」
「ふんいき?ふいんきちゃうの?」
『それでも医者の息子?』
「アホか。ボケやボケ。」
「ツッコミようのないしょーもないボケっすわぁ…。てかなんで男ばっかで肝試しやらなアカンのですか。しかもペアて。普通男女同数でやるもんっすよね。」
『ざ、財前、なんかあったの?』
「だいたい、なんで全員強制参加なんすか。」
『ほんとだよ。なんでマネージャーまで…。』
「しかも他のマネはうまくかわしとるしな。」
『みんな器用すぎるよ!!』
「先輩がトロいだけっすわ。」
『酷い!!』
「ざーいぜーん!行くでー?」
「…部長、ノリノリすぎやまったく。ほな行ってきますわ。」
『いってらっしゃーい!…時に、謙也。』
「なんや」
嵯峨野が、近年稀に見る超いい笑顔で、言い切った。
『肝試し苦手なんだが。』
「え!?それ今言うか!?」
まさかのカミングアウトである。
『というわけで、目隠しするから引っ張ってってよ。』
「いやいやいや、逆に怖いし危ないで?」
『そこは謙也が「無理無理無理無理!」
なんとしても行きたくない嵯峨野。しかし、時間とは無情にも流れるもの。
鳴り響く携帯のアラーム。
「ほら、時間やで。月も出てるし、平気やろ。」
『謙也、先に逃げたらこの一ヶ月ドリンクに塩仕込むから覚悟しろ。』
「わかったわかった。なんなら手ェ繋ぐか?」
『…ん。』
嵯峨野が突き出した手を、忍足は優しく包んだ。
「ツンデレやな。」
『うっさい。』
つんけんしつつもギュッと握られる手に、忍足は笑う。
「こわくなーい、こわくなーい。夜の散歩やから、な?そない震えんといて。」
『…わざとじゃ、ないもん。』
「あー…すまん。軽率やった。」
『黙るな。しゃべれ。イグナアの話しろ。』
「イグアナ、な。なんやねんイグナアて。」
それからしばらく、ひたすら忍足のイグアナトークが続いた。嵯峨野は相槌を入れつつも、物音には過敏に反応していた。