置き場

□跡部と忍足と。
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「あ、ほんまに?ほな10時ごろ迎え行くわ」
『うん、わかったー。またあとでねー』

プツッ。通話は切れた。嵯峨野はあれやこれやと服を選び始める午前8時。

『あー、もうどーしよー!!良い服がないよー!!』

お誘いの相手は、あの、忍足侑士である。下手な格好で行けはしない。むしろ選んでもらいたいくらいだと、頭を悩ませていたところ、来客者があった。

『はい?』
「俺様だ」
『跡部くん…なんのご用?』
「開けろ」
『はいはい…ちょっとまってね』

着替えの途中だったのを、とりあえずてきとーに着てごまかす。ジーンズにキャミソールだったので、半袖パーカーを羽織るだけ。

『はいはい、で、なんの用?』
「七夕まつりとやらを案内しろ。行ったことがない」
『はぁ…でも先約があるんだよなぁ』
「誰とだ?」
『言わないよ。お父さんじゃないんだから』
「…わかった。部員の誰かだな…おおよそ、宍戸か忍足だろう」
『………なんで宍戸さん?』
「庶民代表だ。つまり、相手は忍足だな。よし、俺様も行く」
『え?ちょ、そんな勝手に決められても…』
「ほら、着ていく服を選んでやる。クローゼットを見せろ」
『は?ちょ、やだよ!だめだって!なんで部屋の場所わかるの!?』

上がり込む跡部を止める術など無く、服が散乱した嵯峨野の部屋に入った。

「…酷いな」
『跡部くんの来るタイミングが悪いんだよ!』
「よし、良いこと思いついた。じいや、三人分の浴衣を用意しろ。忍足と俺様と暁の分だ。忍足はわかるな?」
「はい、今すぐに」
『な、何してるの?』
「あれこれ選ぶよりこっちのほうが早い。ほら、セットしてもらえ」
『え?あ、ちょ、跡部くん!』

嵯峨野は母の化粧台前に引っ張られ、黒スラックスにワイシャツ姿のイケメンなメイドさん(女)に、髪をいじられていた。
一方跡部は、忍足に電話をかけていた。

「あー、忍足?今すぐに暁の家に来い」
「そら行くけども…まさか…」
「俺様もいくからな。七夕、案内しろよ」
「この策士!ひとの計画潰す気やな!!」
「さーあ、どうだか」
「はぁ…わかった、今すぐ出るわ」
「浴衣はこっちで用意したからな」
「はぁ!?…もうため息も出えへん。なんでもええわ。その代わり、なんか奢れや」
「わかったわかった。早く来い」

電話を切った跡部は、ニヤッと笑った。

「抜け駆けなんか、させるわけないだろ?」
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