置き場

□30000人
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1.切原赤也




突飛な部長の一言から、現在大阪にいる我ら王者一行。
…別にRPGの話をしているわけではない。
皆さんご存知なので、以下略。

大阪は、昔住んでいたこともあり割と好きな街だ。
しかし、私には苦手なものがある。
…ま、そんなことはさておき。


「魔王殿ー、今日はどこへ行かれるのですー?」
「あのね、暁。学校の外で魔王殿はやめてよ」


どこへ向かって歩いているのかも知らされず、ただついて行くのも飽きた。


「ふっ、幸村にそんなこと言えるのは嵯峨野くらいじゃの」
「怖いもん知らずだろぃ…別名アホ」
「先輩のそういうとこ、尊敬するッス!」
「おや、ここにもネジのゆるい方が…」
「柳生もなかなかの口の悪さだな。仁王と入れ替わるだけある…」
「柳…そんなことまでメモるなよ…」


いつも通りの御一行。
真田だけは、静かに魔王殿の隣を歩いてる。
…よし。


「さーなーだー、たこ焼き食べたいー」
「む、先ほど朝食を食べたばかりだろう」
「食べたけどさー、パン一個しか食べてないもんでお腹空いたー」
「バランス良く食べねば体に悪いぞ」
「真田は朝から結構食べるよね」
「え?そうなの?」
「うん、俺の倍くらい(笑)」
「幸村は少なすぎるぞ」


あーあ、真田の健康食トークが始まってしまった。
んー、それにしてもお腹空いた。
…お、あれはたこ焼き屋…むむむ…よーし。


「魔王殿ー、たこ焼き食べたいでござるー」
「あ、いいね。せっかく大阪に来たんだし、寄って行こうか」


その一言に、みんな賛成した。
だがしかーし。
私は実はタコが苦手だ。
あのお店は、たこ焼き自体も大きいが、タコもぶつ切りの大きなのが入ってる。
むむむ…どうしたものか…


「…?先輩、食べないんスか?」
「あー、うん…タコが苦手なんだけどさー、赤也、いる?」
「え?いいんスか?」
「うん、ここからつついて持ってって」
「そんじゃ、いただきます!…んー、タコだけでもうまっ!さすが大阪っ!」
「うん、おいしい…でもなー、タコ抜きならいいのに…」
「それたこ焼きじゃなくて焼きじゃないッスか…」
「うん、そうなんだよねー…」


なんでもいっか、と、赤也がタコを抜いた生地を口に入れた。
うん、美味い。


「あっ!にお、てめっ!俺のタコっ!」
「出しとくのが悪いんじゃ」
「こら、仁王くん丸井くん、静かにしたまえ!」
「柳生も落ち着けって…」

「美味いが、少々大きすぎるな…食べづらい…んむ」
「情けないが、俺も先程口の中を火傷した…くっ、無念…」
「あー、それじわじわ痛いよねー…ん、おいしー」


なんかグループ出来上がってるし。
やっぱこう見ると、美形多いなー。
ま、中身は残念だけど。


「ね、先輩!」
「あにー?」
「また来ましょうね、たこ焼き屋さん!」
「んー?んー、ん」
「どっちなんすかその答え(笑)」
「そーだねー。そんなにたこ焼き好きー?」


私と来るなら余分にタコ食べれるもんなー。
赤也がそんなにタコが好きだとは思わなかったけどねー。


「たこ焼きっつーか…なんかこうやって食べんの、恋人みたいでいいなー、なんて…」
「…は?」


何を言ってるんだこいつは。


「俺が一生食べますから、先輩のタコ。だから、また次来る時は誘ってください」


…もう一度言おう。
何を言ってるんだこいつは。
だがしかし、不覚にも何かドキッとしたわけで。
なんか負けたくない気がして張り合っちゃうんだよなー。


「それは時に、デートってやつですかい?」
「あ、その…はい…」
「じゃあ、赤也から誘ってよねー。めんどくさいし」
「めんどうなんすか?!」
「考えるの嫌いなの。だから、遠回しに言ったんじゃわかんない」


少し考えるような態度。


「…あの、俺」
「たこ焼きアターック!」
「あっつ!!もー、なんなんすか部長!」
「なにって、暇だったから」
「あー、もういいッス!今ので吹っ切れたッス!!」
「お?なにかするのかい?」
「先輩っ!俺と付き合って欲しいッス」


…唐突な。
魔王殿は、隣でめっちゃ爆笑してるし。
なんでかって?
赤也、魔王殿からの襲撃で顔にめっちゃソースついてっからね。
しかたないから、紙ナプキンで拭いてやった。


「はいはい、手間のかかりそうな彼氏ですわね」
「んぷ、自分でできるっす!」
「わかったよ。じゃあ次来る時は赤也のおごりな」
「えー?」
「二人きりでくるんだから、いいだろ?」
「!…はいっ!」


これは、めでたしめでたしってやつか。
しかし、魔王殿が黙ってるわけもない。


「よーし!それじゃあ赤也をからかいながら大阪の商店街を見て回るよー!案内役には、忍足謙也を呼びつけてあるから、さっさといかないと帰っちゃうよー!通天閣までよーい、ドン!あまりに遅いやつはお仕置きー」


ものすごいテキトーなこと言って、めっちゃのんびり歩いてる。
他の部員はというと。


「赤也、行くぜよ」
「ったく、なんだぁ?さっきのは」
「かっこわるいですよ、あのような姿でとは…」


赤也に何かしらの文句をぶつけていた。
そして、私の隣には魔王殿。


「面白い彼氏を作ったものだね」
「別に作ったんじゃなくて出来ただけ」
「あ、そうだった。ま、暁なら赤也を飼い慣らしてるし、任せられるかなー」
「なにそれ、親心?」
「まあねー」


…私には少々怖い小姑かもしれない(笑)




───
赤也の出番が少なかったです。
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