置き場

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2.一氏ユウジ




…なんだろうか。
ユウジがスッゲーこっち見てる…。


「───っちゅーことやから、よろしゅうな」
「ん、確認さして。日曜、午前9時、駅前噴水跡、時計の真下、おけ?」
「ん、おけやでー」


ただ白石と予定を立てているだけなんだが…ごっつー睨まれとるー、ってこっちの言葉だというのかな。


「日曜、楽しみだなー。買い物久しぶりだー」
「そーなん?女子は結構一人でも行くて聞いたけど」
「そんなことないんだなー、それが。案外…ユウジ?」


休み時間少々の雑談のひと時…なんだか小難しい顔したユウジが、私の腕を掴んでいる。
握りつぶしそうな勢いなんだが…。


「…なに?どうしたの?」
「蔵、ちょお借りるで」
「お、おお…」


私はそのまま連行される。
ひと気のない、北校舎。
…ボコられるんですかね。


「あ、あのー…ユウジ?」
「ちょお黙りや」


だまれと言われましても…。
と、真剣に言葉を考えていると。
背中に冷たい硬い感触。
壁か。
そして壁ドンのように閉じ込められる私。
え、近い。


「…これは、なんぞや?」
「黙りや」
「……………………これはなんぞや」
「…全部お前が悪いんや」


背中の感触がなくなって、今度は温かいものに包まれる。
洗剤の匂いが優しい。
ユウジの匂いがする。
つまり、抱きしめられちゃってる?


「…ユウジ、状況が読めないよ」
「俺にだってわからん」
「えー…」
「ただ…なんや蔵と楽しそうにしてるんが許せんかったんや」
「…つまり、嫉妬?」
「…かもなっ!」


投げやりに言うユウジが可愛くて、自然と頬が緩む。


「やだなぁ、ユウジ。私が白石なんかになびくと思ってんの?」
「…信用はしとる。けどな!もやもやするん嫌いやねん!」
「はいはい。困った婚約者だこと」


そう、かくいう私とユウジは実は幼馴染。
私が東京に行ってしまったので、連絡はあまり取れなかったけど。
小さい子がよくやる、『結婚しようね』の約束が果たされるパターンだと思ってくれたらいい。

「で、なんの話しとったん?」
「妹の誕生日プレゼント買いに行くのについて行って欲しいんだって」
「…ふん、もう戻るで」
「満足したんだな」
「…お前はほんっとに黙ってた方がモテるで」
「じゃあ喋りまくらないとね。ユウジが不安にならないように」
「…うっさいわ!アホ!」


三歩後ろを歩きながら、真っ赤な耳を眺めた。
相変わらず照れ屋だな。
なんてのんきに構えてたら、振り向いたユウジに鼻をつままれた。


「…あにしうのさー」
「…別に」
「じゃあ、んむっ!」
「…これで満足やな」
「…っておい!なんだ今のはっ!」
「なにて…ファーストキス?」


あくまで飄々とするユウジにムキになるのもバカらしくなり、ユウジの隣に並んだ。
そして手を握った。


「今度の休みは、デートに連れてってよね」
「当たり前や!」




───
ユウジは幼馴染が似合う。
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