-BL編-


□怖いなら
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俺は、恋人である蓮二さんに、どうしてもと頼み事をしていた。


「…だめ、スか?」

「ふむ…お前がそれなりの覚悟を持っているならば、聞いてやらんことはない」


頼み事というのは、同性だが体を重ねたいということだ。しかし、俺は大事なことを忘れていた。


「お前は、どちらを選ぶ?聞いてやろう」

「…へ?」

「分かりやすく言ってやる。突っ込みたいか、突っ込まれたいかということだ」


突っ込みたいか、突っ込まれたいか?…ああっ!!


「上になるものにはそれなりの責任が伴うし、下になるものには肉体的疲労は大きいだろう。さあ、選べ」

「お、俺が…下で。流石に悪いッス」

「それがお前の意思なら、聞いてやる。遠慮など要らないのだが…」

「蓮二さんなら、任せられるッス」

「ふむ…そうか…しかし俺とは言えど、資料はあるが経験は皆無だ。よいか?」

「はいッス」


うなずくと、ひょいと抱き上げられた。細身の体ではあるが、しっかりとしなやかな筋肉がついている。蓮二さんの体は、とても綺麗だ。体だけじゃない。容姿から所作に至るまで、日本の美を漂わせる。ふわりとベッドに下ろされ、優しく抱き締められる。


「赤也…」

「っ、ぁ」

「こんなことをしなくとも、俺はお前を愛している。それだけは、忘れるな」

「は、んっ、んぐ」


答える前に、すべてを奪い尽くすようなキス。俺の感覚は全部そこに集中して、蓮二さんの唇と舌の熱さを感じるだけ。頭の奥がぼうっとして、思考が鈍る。やっと唇が離されると、俺のシャツははだけ、上半身が露になっていた。


「相変わらず、いい筋肉のつき方をしている…」

「でしょう!」

「こら、おとなしくしてろ」

「あ…はい…」


褒められた嬉しさに、ついはしゃいでしまう。怒られてシュンとすれば、額にキス。


「ムードを壊すなと言う意味だ。ちゃんと俺を見ろ」

「っ、そこで喋らないでくださいよ…」


耳元で、普段より低く掠れた声で、あおるように囁かれる。顔に熱が集まって、体も反応し始めている。


「下も、脱ぐか?」

「あ、はい…蓮二さんも、脱いで欲しいッス」

「そうだな。すまないが、腰をあげてくれ」

「んっ…」


素早くするりと抜き取られる。蓮二さんもするすると脱ぎ捨てて、俺よりは細く、しかし均整な体が露になる。いつ見ても、綺麗だ。


「蓮二さん、きれー…」

「見る度、そればかりだな…今のところ学生時代からカウントして53.28%、同棲をはじめてからカウントして100%だ」

「綺麗なんですもん」

「そうか。赤也の体も…いいと思うが…」

「っあ…ぅ」


蓮二さんの手がするすると俺の肌を滑る。体の芯から、ぞわぞわする。口からは抑えきれない声が溢れてくる。体は確実に熱を上げていて、でも蓮二さんと俺を遮るものは何もなくて、すべてを奪われていく。


「何も準備がないからな…あ」

「なん、っスか?」

「俺としたことが…赤也、大事なことを忘れていた」

「ゴムっすか?それなら俺の鞄に」

「違う。もっと重要なことだ」


俺は突然風呂場に連れていかれた。そして、色々された。ここんとこは恥ずかしいから省略!!(照)で、俺の腹ん中は空っぽになったわけ。ちょっと痛かった…。


「すまない。ちゃんとしたものを買ってくればよかったのだが」

「このまま一人で置いてかれる方が辛いッス」

「といわれる確率が98.62%もあったからな。やめておいた。さて…そしてもうひとつ。潤滑剤を買っていない。さすがに唾液だけでは辛いからな…」

「じゃあ、買いに行きますか?」

「いや…これを使おう」

「んっ、ちょ、そな、きゅ、に」


いきなり蓮二さんの手が俺のを包んで、優しく、だけど的確に刺激されて、一気に上り詰める。俺は蓮二さんの手に欲を吐き出す。


「少ないが…たぶん大丈夫だろう。深呼吸だ。力を抜け」

「う…はい」


言われるがままに目を閉じて力を抜く。ぬるぬると蓮二さんの指で俺の欲を塗り込まれて、だんだん変な気分になる。むず痒いような、足を擦り合わせたくなるような感じ。


「ゆっくり、息を吐け」

「はい…」


息を吐ききる寸前。ぐっと体に入り込む異物。声を出すことも出来ず、異物感に目をギュッと閉じる。気づいた蓮二さんは、指をそのままに、俺にキスをする。


「怖かったら、やめてもいいんだぞ」

「や、いけます…っ」

「無理をするな…まったく」


ぬるっと指が抜けて、強ばっていた体が緩む。思ったより緊張していたみたいだ。


「こんなことをしなくとも、愛は伝わる。わかったか?」

「はいッス」


その日以来、そういうことは試してないけど、互いの体に触るくらいは、するようになった。また少し、恋人に近づけた気がする。


───怖かったら、やめてもいいんだぞ。


あの言葉に、助けられたな。いつだって俺は、蓮二さんに助けられて生きている。だからいつか、俺も蓮二さんを助けられるようになりたい。
 

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