SKET

□nosy, noisy schoolmates!
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「お、椿、どないしたんや」
2-Cの教室のドアを開けた瞬間、声をかけられた。
「鬼塚。…と、笛吹」
寄ってきたのはこのクラスのヒメコこと鬼塚一愛と、スイッチこと笛吹和義だ。…一人足りない。
「藤崎はどこだ?」
「なんや、ボッスンに用あるんか」
「あぁ、以前借りたものを返しにきたんだが」
持っていた紙袋を差し出す。中身は、藤崎に面白いからと無理矢理渡された漫画本が3冊。
『ボッスンなら今日は休みだぞ』
…なんてタイミングの悪い。
「なぜだ?」
「風邪ひいたんやて。昨日依頼んときに雨の中傘ささんで出てってびしょ濡れなってたからなぁ。それが原因とちゃう?」
「…そうか」
また無理をしたのか。まったく。
『おやぁ?ボッスンのことが心配なのかね?ん?』
「はぁ!?何を言っている!!」
「やっぱりお兄ちゃんが心配なんやろ。可愛い弟やな〜。え?椿ー」
ああ、なぜこの二人はいつもそこにつっかかってくるんだ…。
「そういうわけではない。ただまた無理をしたのかと思っただけで…」
「それを心配って言うんやこの弟!!」
鬼塚がばんばんと背中を叩く。…力の加減をしてくれ。
「…と、とにかく!!藤崎がいないなら仕方ない。また出直す」
二人に背中を向け、さっさと教室を出る。後ろから何やら声が聞こえた気がしたが、無視。これ以上いじられてたまるか。



***




「椿くん」
「なんだ、丹生?」
放課後、生徒会室に行くと、丹生がノートを渡してきた。
「…これは?」
「先程鬼塚さんと笛吹さんが、椿くんにこれを藤崎さんに渡すように言ってくれと持って来たんです。今日の授業の板書だそうです」
「なぜ僕が?」
「さぁ…?でも、椿くん何か藤崎さんにご用があるのでしょう?それのついでに、と言っていましたわ」
パシりか。僕はパシりか!!
「しかし…」
「いいじゃない。椿ちゃん、藤崎の家まで届けに行ってあげれば」
話を聞いていたのか、榛葉さんが話に首を突っ込んできた。
…なんですか。その含み笑いは。
「椿ちゃん、藤崎の家知ってるんでしょ?用事もあるんだし。それに多分、スケット団の子たちもう帰っちゃったよ?」
鬼塚も笛吹も帰った!?ああ、なんて無責任な。
「はぁ…わかった」
仕方なくノートを受け取る。
漫画は明日返せばいいと思っていたのになぁ。予定が狂った。
時計を見ると、四時を指していた。定例会議の時間だ。





「以上で本日の定例会議を終わります」
定例会議もつつがなく終了。だが、様子がなんだかおかしい。
「会長、帰られないのですか?」
会長だけじゃない。榛葉さんも、浅雛も、丹生もだ。
「なんだよ椿、帰れってか」
「いえ…そういう訳では…。その、いつもなら会議が終わると皆さん速攻で帰るのに…。今日はどうしたんですか?」
「…別に理由なんてない。…なぁみんな?」
こくこくとみんな頷く。なんか変な気が…。
「椿くん」
「なんだ?浅雛」
「そこの書類、私がやる」
「え?でも…」
これはいつも浅雛の担当している仕事じゃないだろう。
「いいから。私がやる」
「そうか…なら頼む」
みんな、どうしたんだろう。
「…」
「どうした椿?暇そうだな」
「あ…。浅雛が書類をやってくれたので、やることがないというか…」
会長が、ちら、と時計を見る。
「…いい時間だな」
?はい?
「よし椿、お前帰れ」
「えぇ!?なんでですか!?」
「仕事ないんなら帰れよ」
「で、でも…」
「大丈夫だよ椿ちゃん。後は俺たちでやるから」
「榛葉さん!?急にどうしたんですか!?」
「椿くんは先に帰ってください」
「丹生!?」
「IHK(いいから早く帰れ)」
「ええぇ!?」
本当に今日はみんなどうしたんだ!!
「…ま、まぁ、そこまで言うなら…お言葉に甘えて」
「椿ちゃん、藤崎の家行くの忘れちゃ駄目だよ」
「は、はい…。では失礼します」
うーん、みんな何かおかしいような…。何かあったんだろうか…。



***




椿のいない生徒会室で、生徒会役員一同はお茶を飲んでいた。

「行ったね椿ちゃん」
「かっかっか。作戦成功だな」
「緊張しましたわ」
生徒会室のドアが開く。その向こうには、帰ったはずの鬼塚と笛吹。
「おぅ、お二人さん。お疲れ。作戦は成功だ」
「鬼塚さん、笛吹さん、お茶飲みます?」
「そりゃ良かったわ。あ、ミモリンお茶ありがとな」
『この時間なら茜さんもいないだろうし、妹も塾だからボッスンは家に一人だな』
「これで椿ちゃんと二人っきりだね」
「NSS(なんだかそわそわする)」
「デージーさんその気持ちわかるわー!!あたしもや」
「二人でどうしてるかな」
「仲良くしているといいですわね」
『椿にボイスレコーダーでも仕込んでおけば良かったな』
「あー、スイッチなんでそれやっとかなかったん!?」





そんな会話をしていることは、もちろん椿は知る由もない。


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