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□*Tandem-最期の言葉- *
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此処は現実とは異なる世界────。
「………………」
太腿まで伸びた緑髪を揺らして少女は屋敷の中を歩いていた。
『…ひっく…』
少女の目の前に残骸が現れ、泣いている。
『…どぉして…』
『私は…“あの人”を守りたかっただけなのに…』
『私が壊した────!!』
顔を両手で覆うとその場に崩れ落ちた。
少女は無表情で残像の横を通り過ぎる。
『あの男がいなければ全てが幸せだった!!』
『“あの人”は壊れずに済んだし』
『母様だって死ななかった───!!』
覆っていた手を退かす。
その顔は憎しみで歪んでいた。
『あの男のせいで…うううっ』
『絶対に許さない────!!!』
後ろで激しく声を荒げる残像に少女は静かに目を閉じる。
『このままじゃ…また“あの人”を傷付ける…』
悲しい両の眼で自分の手を見つめ、辛そうに顔をしかめた。
『また…壊してしまう───!!』
震える手を恐怖に染まる表情で見下ろす。
『そうなれば今度こそ…“あの人”を失うことになる』
『もう…“あの人”に会えなくなる…』
ポロポロと涙を流す。
『“あの人”を傷付ける前に…』
『私が…“あの人”を…』
眉を寄せて辛そうに顔を歪める。
『この手で───……』
頬を伝って床に落ちた涙は跡を残した。
閉じられたままの少女の瞳。
何も語りはしないが、微かにその表情が辛そうに歪められている。
『全部…何もかも消えて無くなればいいのに…』
また、くしゃりと泣き顔で歪む。
『お願い…ぜんぶ…消えてよ…』
少女は閉じていた瞼をゆっくりと開ける。
後ろを振り向けば消えそうな声で悲しそうに泣く残像の姿が視界に映った。
『そうすれば…』
残像は泣き腫らした目で少女を見た。
『彼は幸せになれるよね…?』
涙を浮かべて微笑んだ残像は光の粒となって消えた。
「………………」
切なげに瞳が伏せられる。
少女は踵を返して長い廊下を進み始めた。
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