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□*Illusio-苛立ちの不協和音- *
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「あっちは無事に見つかったか…」
壬を保護したと梨央から伝令神機に知らせが入る。
「にしても…」
《クスクス…》
《早クオイデ。》
《楽シイ夢ガ君ヲ待ッテルヨ。》
「チッ…さっきからうぜえな」
頭の痛みは少し和らいだが蒼生は自分を呼ぶ不気味な声に苛立ちを浮かべていた。
「!」
すると錆びついた臭いが鼻をかすめる。
「なんだ…この臭い…」
それは蒼生の嫌う臭いだった。
「血の臭いだ…」
グッと眉間を寄せて顔をしかめる。
《サァ…夢ノ時間ダヨ────。》
「!」
そこに自分と瓜二つの少年が現れた。
「俺…?」
銀色の髪、青い眼。
ただ違うのは…
「(壊れた人形みてえに“生”を感じねえ…)」
彼女と同じ青い眼は濁り、光を無くしている。
「─────」
無表情のまま、剣を手にした少年は…蒼生に向かって突っ込んだ。
「……!」
ガキィン!!
向かい来る少年の剣を蒼生は自身の斬魄刀で受け止める。
刃同士がガチガチと音を立てて攻防を続ける。
蒼生は腕に力を入れて少年の剣を押し返すように弾き飛ばした。
両者はバッと間合いを離す。
「いきなり何しやがるテメェ!!」
怒号を飛ばす蒼生だが少年は虚ろな眼で地面を見下ろしている。
「(どうなってんだ…コイツは…俺なのか?)」
《コレガ君ダヨ。》
「は?」
《“壊レタ人形コソガ本当ノ君ナノサ”!!》
「…どういう意味だ?」
《ソノママノ意味ダヨ。》
「(…目の前にいるコイツが…本当の俺…?)」
蒼生はジッと少年を凝視する。
「誰だお前」
警戒心を解かずに言った。
「…俺ハ…封印サ…レタ…オ前ノ…記憶…」
「何…?」
「彼女ガ…無カッタ事ニシタ…記憶ノ…残像…」
「!」
「オ前ヲ守ル為ニ…彼女ガ代償ト引キ換エニ…記憶ヲ改ザンシタ…」
蒼生は目を見開いた。
「真実ヲ隠ス為ニ…彼女ハ…オ前ニ…」
《ソレ以上ハ、アノ子ガ許サナイヨ。》
「!!」
「………………」
《君ガ今、真実ヲ話シテシマエバ、彼女ハ君ゴト殺スヨ。》
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