□*Apricus-優しい恋- *
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「美味しい〜」


スプーンで掬って頬張ると口の中でケチャップの効いたチキンライスがふわとろの卵と絶妙にマッチしていて思わず頬が緩む。


「隊長のビーフシチューも美味しそうですね」


「食うか?」


「いいんですか?」


ゴロッとした分厚い肉がホロホロと崩れる。


「柔らかそう…」


ジッと見つめていると…


「ほら」


日番谷が肉とビーフシチューをスプーンで掬って梨央の口元まで運ぶ。


「へ!?///」


その行動に顔を紅潮させる。


「どうした?
食わねえのか?」


「あ、あの…」


どうしていいか分からず硬直する。


「早く食わないと溢れる」



きっと“これは”隊長の癖なのだろう


前にもこんなことがあったような気がする…


食べさせてもらえるのは嬉しいけど…


さすがに人前だと恥ずかしいわけで…



「…隊長は天然ですか」


「は?」


「それか意地悪でもしてるんですか」


「何でお前に意地悪する必要がある」


「こういうのは…その…恥ずかしいのですが…」


「!」


羞恥に顔を染める梨央を不思議に思った日番谷が自分の手元にあるスプーンを見た後、彼女が恥ずかしいと言った意味を理解する。


「っ………!!?」


日番谷は気付いた。


これはあの時のデジャヴである…と────。


「ち、違う!!俺は別に…!!」


「隊長!溢れます!!」


「っ〜〜〜〜」


無意識に取った行動に日番谷は顔を紅潮させる。


「(これじゃあ…)」


「(まるで…)」


「「((“食わせてやるからあーんしろ”とでも言ってるかのような…!!))」」


二人は顔を俯かせて恥ずかしさで黙ってしまう。


「…じ、自分で食べますね」


「…ああ」


「いただきます」


ビーフシチューをスプーンで掬って口の中に運ぶ。


「美味しい〜♪」


ジュワッとした厚めの肉が歯で噛み切れると中に詰まっていた肉汁がブワッと溢れ出した。


「お前のオムライスも貰っていいか?」


「はい!」


お互いに食べ物をシェアして味を楽しんだ。


そして食後にはお待ちかねのデザートが運ばれてきた。



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