□*Equiti-見えざる帝国- *
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「『すぐに壊れるのに』」


布団に仰向けで寝ていた梨央は虚ろな目で天井に向かって手を伸ばしていた。


「…………………」


焦点の合わない眼は次第に現実味を映し…


「っ………?」


寝惚けていたことに気付いた梨央は驚いた表情を浮かべる。


「今のは…」


伸ばしていた手を下ろし、上体を起こす。


「懐かしい夢だな…」


頭に手をやって顔をしかめる。


「気持ち悪い」


そう吐き捨て、時計を確認する。


「巳の刻…」


時刻は9時を回っていた。


「やばい…寝すぎた」


これも変な夢を視たせいだ、と自分に言い聞かせ、布団から出るとすぐに着替えて身嗜みを整える。


「髪、伸びたな…」


背中辺りまで伸びた髪を手で掬えばサラッと落ちる。


「“世界で一番強い”奴なんて…いるわけないのに…」


斜め下を見下ろして悲しそうに呟く。


梨央は自分の掌を見た。


「………………」


そしてギュッと握り締める。


机の上に置かれた青い薔薇の髪飾りを頭に付け、鏡に映る自分と向き合う。


「さて…今日も頑張りますか」


スッと鏡の前から離れ、隊首羽織を着て部屋を出た。



































隊舎に向かう途中、花の様子を見に行けば…


「!」


白い装束を身に纏った黒髪の少年が立っていた。


耳には札のような飾りが付いている────。


梨央は驚いて目を見開き、少年は綺麗な花を咲かせた幸福花に触れようと手を伸ばした。


「───触るな。」


「!」


ピタリとその手が花に触れる寸前で止まる。


背を向けたままの少年に梨央は怖い顔を浮かべて言う。


「何故キミが此処にいる────伏見。」


伏見と呼ばれた少年はゆっくりと振り返る。


「よぉ、久しぶりだなァ」


子供の頃のような無邪気な笑顔とは違い、人を見下す様な賤しい笑みで伏見は笑った。


「元気だったかァ?」


「死んでなかったんだな」


「ハッ!俺が死ぬわけねーだろ!」


伏見は鼻で笑い飛ばす。


「俺ァてっきりお前の方が先に逝っちまってると思ってたぜ」



相変わらず不快な奴だ


そのニヤけた顔も癇に障る



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