□*Illusio-苛立ちの不協和音- *
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映し出された幻影に蒼生は驚いて目を見開く。



《お前達の母を殺したのは…この私だ。》



髭を蓄えた黒髪の男がそう言った。



《なん…だと?》



昔より髪が伸びた緑髪の少女は思わず聞き返す。



《お前が…母さんを…》



顔立ちの整った銀髪の少年は怒りを露わにした。



《お前達は母親を殺した相手をずっと探していたのだろう?あの日から血眼になって手がかりを掴もうとしていたのだろう?見つけ出して、必ず復讐すると誓ったのだろう。》



賤しい顔で男は笑う。



《今、ここにいるぞ。》



《《!!》》



《お前達の憎むべき敵が、目の前に───!!!》



その瞬間、少女は持っていた鞘から剣を引き抜き、走り出す。



《お前が母様を────!!!》



《待て梨央!!》



怒りに駆られ、男に向かって突っ込んで行った梨央を蒼生は咄嗟に声を投げかけて制止させる。


だが蒼生の声が届いていないのか、憎しみの表情で剣を両手で握りしめ、男に向けて振り下ろそうとした。


ザワッ



《!?》



彼女の剣は…男の頭に当たる寸前で止まった。


男の放つ殺気に梨央は背筋を凍らせる。



《何で…動けない…?》



剣を握る手がカタカタと震えていた。



《フッ…やはりな。》



《!》



《恐怖で身が竦んでいて斬れないのだ。》



《何だと…?》



《貴様では私は倒せぬ。》



その言葉にカッとなって男の腹部に目掛けて片足を蹴り上げた。



ガシッ



《!!》



その足は簡単に受け止められる。



《この程度の殺気をぶつけただけで貴様は恐怖した。それは貴様が弱い証拠だ。》



《黙れ!私はお前を殺す!》



《ニ度も言わせるな。
弱い貴様では私は倒せぬ。》



《……………》



《もっと憎め。》



《!》



《そして殺気をぶつけろ。》



掴まれた足がミシミシを音を立てて痛む。



《何故…母を殺した…》



《あの女は怪物だ。》



《!!》



《私が生きる上であの女は邪魔だった。》



《だから殺したのか…?》



《そんな下らぬ理由で殺さぬ。》



《じゃあ何故お前は母を…!》



その質問に男は唇の端を上げて笑った。


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