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□*Illusio-苛立ちの不協和音- *
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《あの女は…罪禍は…並外れた力を秘めていた。それも世界を一瞬にして滅ぼしてしまう程の脅威的な力だ。あの女の強さは敵の心をも簡単に殺してしまう。そして支配してしまうのだ。罪禍は…莫大な力をその身に宿していた。…欲しいと思わないか?そんな力があるのなら。》
《まさか…母様の力を奪う為に?》
《最初は我が支配下に置いて目の届く範囲にいさせようとした。だがあの女は拒絶したのだ。拒絶して…剣を取った。》
《当たり前だ。母さんがテメェの言いなりになるわけねーからな。》
《交渉は決裂。
だから無理やり奪う事にしたのだ。》
《ッの…愚図野郎!!》
《母さんの力を手に入れる為だけに…俺達から母親を奪ったのか…》
《お前達の母親は勇敢だった。愛する家族の為に命を捨て無意味な戦いに挑んだ。》
《無意味だと…?》
蒼生は眉を顰める。
《少し脅せばあの女は簡単に剣を下ろした。》
《脅した…?》
《母様に何をした!!》
《“力を渡さなければ、貴様の愛する家族が死ぬ事になる”と言ったのだ。》
《《っ………!!?》》
二人は驚いて言葉を失う。
《そんな…何で母様…》
《俺達を護る為に…》
《貴様達の母は成す術も無く私の力に敗れたのだ。あの時の罪禍の悔しがる表情は見世物としては上出来だった。“頼むから子供達には手を出さないでほしい”とまで言っていたな。》
《!!》
《あの女は愚かだ。そんなもの、切り捨ててしまえば良いものを。子供がどうのと散々口にしていた。》
《返せ…》
男は梨央を見下ろす。
《母様の力を返せ────!!!》
《返さぬ。》
《ふざけるな!!お前の都合で母様から力を奪いやがって!!お前のせいで母様は殺された!!お前がいるからだ…!!》
激怒する梨央に男はニヤリと笑って口を開いた。
《“───────”》
男が何かを呟いた後、梨央は大きく目を見開いた。
男は持っていた剣を振り上げ、驚いた表情の梨央に向かって振り下ろした。
ザシュッ
《ぐっ……!》
《梨央!!》
腕を斬られ、よろめいた梨央に駆け寄る。
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