□*Illusio-苛立ちの不協和音- *
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《おい!大丈夫か!?》



《蒼生くん…こいつだ。》



《!》



斬られた箇所から血が出てるのも気にせず、梨央は憎しみの表情で男を睨み付ける。



《こいつが母様の力を奪って殺した。憎い…私達から母様を奪ったあいつが憎い…!!》



押さえた場所から血が滲み、片方の手を赤く染める。



《私を殺したいのならその憎しみを糧にいつか私の首を取り来い。お前達には私を殺す理由がある。私はいつでも貴様達を歓迎する。だが…貴様達が私を殺す程の力があれば…の話だがな。》



《ああ…必ず殺しに行ってやる。テメェが母さんの命を奪ったことに変わりはねえ。それにコイツを泣かしやがった。俺はテメェをぶっ飛ばす。すぐに殺してやるから待ってろよ。》



蒼生は怪我をした梨央を支えながら真っ直ぐな目で男を睨み付ける。


男はフッと笑いを洩らす。



《戯言だ。貴様達が強くなろうとも私には到底勝てぬ。だが…暇つぶし程度で相手をしてやろう。待っているぞ…貴様達が私を殺しに来るその時を────。》



そういうと男は闇に紛れて姿を消した。



《っ、待て!!》



《馬鹿、追うな。》



《どうして逃すの!?》



《今の俺達じゃ勝てねえよ。
戦っても二人で無駄死にするだけだ。》



《そんなの戦ってみなきゃわからない!》



《現にさっきお前、あいつの殺気にアテられて動けなかっただろうが。》



《っ…それは…》



《逸るな。命取りになるぞ。》



《…母様を殺した相手をやっと殺せると思ったのに…やっと…復讐を果たせると思ったのに…取り逃がすなんて…そんな残酷なこと…》



《お前の気持ちは痛い程わかる。
でも今はまだ我慢だ。》



《………………》



《これは兄貴命令。》



《ズルイ…そんな命令…》



《おう。悪いな。》



梨央の頭に優しく手を置いて笑いかける。


蒼生は服の裾を持ち上げ、歯で噛んで破く。


それを怪我した梨央の腕に巻き付けた。



《ったく…人の制止も聞かず一人で突っ走って行きやがって。》



《だって…》



《ほら、帰るぞ。》



《!》



蒼生は手を差し伸べる。



《うん…》



梨央はその手を取り、蒼生と共に歩き出した。


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