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□トモダチ ト ナカナオリ
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地下監獄最上層
第零監獄『─────』
全てが闇に包まれ
全てを"無"にする
脱獄不可能の監獄である────。
「お兄様…いる?」
「ここにいるよ」
「暗くて見えないわ…」
罪を犯した兄妹は
ガラス壁を一枚隔てた両側に
収監されていた───────。
「寒くないか?」
「大丈夫よ」
「怖くないか?」
「お兄様がいるから平気よ」
「寂しくないか?」
「…少し寂しいわ」
ガラス壁に身を寄せ、反対側にいる兄・悠人の声に耳を傾ける。
「そんな寂しさ、すぐになくなる」
「!どういうこと?」
「"協力者"がいるんだ」
「協力者?」
悠人は監視役の男の耳に入らぬ小さな声でガラス壁越しに桃香に伝える。
「特別隊首会が執り行われる日、一人の男が俺の前に現れて言ったんだ。『助けてやる』って…」
「その男…信用できるの?」
「最初は警戒したが話を聞く限り、そいつも護廷に何かしらの"恨み"があるみたいだ。護廷を潰せるなら何だって協力してくれるとも言っていた」
「でもこの監獄は脱獄不可能なのよ?」
「そいつだけしか知らない秘密の抜け穴があるらしい。だから奴と手を組んだ」
「本当!?この薄汚い場所から本当に出られるの!?」
「ああ、もちろん。だからもう少しの辛抱だ。
我慢できるな?桃香。」
「わかったわ」
出られると知って桃香は大いに喜んだ。
ガチャッ
「交代する」
ドアを開けて入って来たのは黒装束を着た男だ。
だが監視役の男は不思議そうな顔を浮かべる。
「零時の担当も私の筈だが?」
「上からの指示で変更になった」
「そうか…」
監視役の男は深く考えず、時刻表の横の欄に自分の名前を書き記した。それを次の監視役の男に渡して部屋を出て行く。
「引き続き頼む」
「ああ……」
時計の針が【12時】を差す
少し前の出来事だ────────。
完全に扉が閉まると再び部屋は暗闇に包まれる。
「さてと…助けに来たぜ」
男はニヤリと笑った。
「随分と遅かったな」
「この監獄は四十六室共が目を光らせてるからな。下手に気を急かすと潜入したことがバレて脱獄は失敗だ。んで…どうよ気分は?」
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