□サンケタ ト ハクダツ
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「いっちー…あとでシバく!!」


ぷんすかと怒りを表しながらザクザクと地面の砂を踏む。


彼女は何故か今、仲間とはぐれて一人だけ別の場所にいた。


「彼を先頭で行かせるんじゃなかった!!霊子で作った足場がボロボロのせいで崩れて落ちちゃったよ!!乱気流に呑まれて吐き出された先が此処だよ!!」


ダンダン!!と地団駄を踏み荒す。


「まったく…」


しばらくして落ち着きを取り戻した梨央は空を見上げる。


暗色に染まる中、一際目立つ月の輝き。


「虚圏とは淋しい場所だな…」



虚無に近い世界


色の無い世界


音の無い世界


何処を見渡しても


静けさが残る


淋しい世界────……



「さて…彼らを探すか」


目を閉じて意識を集中させる。


「見つけた」


視線が向ける先には遠くに聳え立つ宮殿。


そこを目指した。


「!…敵襲か?」


一護達の姿を見つけたが何故か敵と思わしき相手と遭遇していた。


「何で敵と仲良くなってんの?」


「梨央!?」


「仁科さん!!」


「やっほー雨竜くん♪」


“そして…”と言葉を付け足すと一護に視線を移す。


「やあ…いっちー」


ニコォ…ッと黒い笑みを深く浮かべる。


その笑顔に一護は反射的に肩をビクッと跳ねさせた。


「ま、待て!!あれは俺が悪かった!!」


「ほほぅ…?」


「まさかオマエが崩れ落ちるなんて思わなかったんだよ…!!」


「へぇぇ…」


慌てて弁解する一護だが梨央は笑顔を浮かべたままである。


「っ………!」


これは本格的にまずい…。


嫌な汗を流す一護の中で危険信号が鳴った。


「ボロッボロの足場を走らせておいて“オマエが崩れ落ちるなんて思わなくて”は私からしてみれば“オマエがそんなドジをするなんて思わなくて”と言ってるように聞こえるんだよ」


「あ、いや…そういうわけじゃ…」


梨央の笑顔に圧倒された一護は思わず後ろに後ずさる。


「そもそもキミが作る足場に安全性なんてこれっぽっちもないんだよ」


「……………」


何も言い返せず恐縮している一護に雨竜と茶渡はご愁傷様というよな眼差しを送っていた。


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