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□セカイ ト ヤクメ
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ザワ…ッ
「チャド…!?」
「霊圧が…」
ピクッ
「!」
茶渡とは別の霊圧を感じ取る。
「…いっちー」
「どうした?」
「少し別行動してもいい?」
「ハァ!?オマエ何言って…」
「お願い」
「!」
「必ず追いかけるから」
「…わかった」
ダンッと地を蹴って速度を上げた一護の背中を見送る。
「さて…」
近くの壁に手を当てて目を閉じた。
「この辺だな」
確認するとその場から少し離れる。
そして壁に向けて掌を伸ばす。
「破道ノ六十三、双蓮蒼火遂」
ドォォオオン!!!
掌から放たれた蒼い光が壁に直撃して大穴が空く。
その穴を潜って先ほど感じた霊圧を探る。
「こんなところで何をしている」
「!」
気配を消して現れたのは黒装束を身に纏った人物だった。その顔はフードで隠れていて素顔を確認する事はできない。
「気配を消すのに慣れてるんだな」
「何をしているかと聞いている」
「キミの霊圧だと思って追ってきた」
「何故追う」
「キミに会いたくて」
「……………」
“名も亡き人形”は気分を害した様に顔を歪める。
「そんなに邪険にしないでよ」
「お前は何の為に此処へ来た」
「友達を助ける為に」
「井上織姫は自らの足で藍染惣右介の許に向かった。彼女はお前達を裏切った。助ける価値は無いはずだ」
「キミが彼女の価値を決めるな」
「!」
“名も亡き人形”の言葉を否定する。
「…偽善だな」
「どういう意味だ」
「お前の言葉は上辺だけだと言っているんだ」
静かな声で、だが、ハッキリした音で言う。
「それは本当に────“お前の言葉なのか”?」
その問いかけに梨央は目を見開く。
「人を馬鹿にするのも大概にしろ」
怒りを含んだ鋭い声で“名も亡き人形”は云う。
「本当のお前は悪人だ。その口から発せられる言葉も、その人当たりの良さそうな笑顔も、全て“偽物”に過ぎない。だから友達を助けたいと云ったお前のその言葉は…上辺だけの口約束だ」
「…………………」
梨央は顔を俯かせる。
二人の周りは何の音も無く、静寂だけが残っている。
“名も亡き人形”は顔を俯かせている梨央をジッと見ている。
その、瞬間だった────。
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