□*Historia-そして物語は完結する。- *
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ハッシュヴァルトの体がバランスを失い、地面に仰向けで倒れる。


「…何だ…その…顔は…。…悔しいと思うか…私が…陛下に…力を…奪われて…。…逆だ。陛下が…お前から…力をお奪いにならなかった事を…誇らしく思う…。私から…力をお奪いになった事を…誇らしく思う…」


筒抜けになっている天井に向かって手を伸ばす。


「私だけが…陛下のお役に立てるのだから…」


その悲痛にも似た思いに雨竜は一言…。


「…………そうか…」


傷だらけの体からは血が流れ落ちる。


それでも雨竜は何とか立ち上がり、歩き始めた。


「…待て…石田…雨竜…。
……お前の傷を…私に…移して行け…」


「!?」


「私は…じきに死ぬ…傷があろうと…無かろうと…それは変わらない…」


「何を…言っているんだ…」


「…どうした…憐れみか…?先刻までは私を殺すつもりで戦っていた筈だろう…」


「…しかし…!」


「…何を…迷う…全てを…秤にかけろと言った筈だ…。秤にかける事もできず…迷いに追われて決めた事は…全て後悔になるからだ…。…ならばそれも…秤にかけろ…石田雨竜…。お前は………友を助けに行くべきだ……」


雨竜は目を見開く。


そしてハッシュヴァルトに傷を移してその場から離れる。


靴音だけが響く。


雨竜は振り向かず、ただ前だけを見て歩く。


その時、雨竜の目の前に一人の少女が光の粒となって現れた。


少女はゆっくりと歩を進める。


雨竜の眼には何も映らない。


彼はそのまま少女の横を通り過ぎる。


「……………………」


少女は後ろを振り返り、背を向けている雨竜を見た。


「"彼を救ってくれてありがとう"」


「!!」


声がして雨竜はバッと後ろを振り返る。


だが、そこには誰もいない。


「今のは…?」


確かに声が聞こえたのだ。


その声の持ち主はわからない。


けれど…


「(笑っていた気がする。)」


もちろん顔を見たわけではない。


ただ、"そんな気がしただけ"だ。


「まさか…」


雨竜はその真意に気付いたのか、小さく微笑んで踵を返すと、歩き出した。


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