□悪夢のはじまり
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その身に刃を受け、地面に倒れた桃香。


地面には桃香の体から溢れた赤い血が水溜りのように広がっている。


ピクリとも動かない桃香を見下ろした流歌の手には刺した時に着いたであろう桃香の血が付着したナイフが握られている。


「も、桃香ちゃん…!!!」


偶然その場を通りかかった女が血を流して倒れている桃香を見て悲鳴を上げた。


女は顔を青ざめさせ桃香を見た後、ゆっくりと視線を流歌に移す。


「……………………」


未だ何が起きたのか理解できず、放心している流歌は頬に手を伸ばす。ヌルリとした生温かい感触がした。


指先に付いた赤い色を見た流歌はすぐに"それ"が自分の血ではないことに気付く。



誰の血?


私のじゃない


どこも痛くないし


どこも刺されてない


じゃあ"これ"は…?



暗い瞳を宿す流歌は桃香を見る。



ああ なんだ


"これ"は私の血じゃない


彼女の血だ─────………



「今の悲鳴はなんだ!?」


「どうした!?」


鼓膜が破れる程の音量で叫んだ女の悲鳴を聞きつけた他の死神達が驚いた様子で外に飛び出して来た。


そして先程の女と同じ反応をする。


「桃香ちゃん!?」


「血が…!!」


「何があったんだよ!?」


最初にこの場に駆け付けたのは赤い髪の男だ。



彼の名前は何だったか…



「阿散井副隊長!!」



そうだ


六番隊副隊長の阿散井恋次だ


副官でありながら既に卍解を修得している


隊長クラスに近い実力者────────。



「桃香!!おいしっかりしろ!!」


血まみれに染まる桃香の体を抱きかかえる。


「お前…どうしたんだよ!!」


意識を失っている桃香を見て取り乱す恋次。


「誰かこの状況を説明しろ!!」


パニックに陥っている恋次は近くにいる流歌の存在に気付いていない。


その場にいる全員が戸惑ってる中、目撃者の女が震える手で流歌を指差した。


「その男です!!
そいつが桃香ちゃんを刺したんです!!」


全員の視線が一斉に流歌に向けられる。


「まだナイフを持ってる!!
また誰かを刺すかもしれない!!」


女は流歌を激しく批難する。


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