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□書類配りII
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【五番隊舎】
「失礼します」
無視をされるのを分かっている為、勝手に扉を開けて中に入る。
ピリッと空気が変わるのを感じた。
仲間と楽しく喋っていた一人の少女が流歌に気付くと笑顔を消して険しい表情へと豹変させる。
「書類を届けに来ました」
ズンズンと歩き出して流歌の前で立ち止まる。
「そんなに怖い顔をしてどうしたんですか。せっかくの可愛い顔が台無しですよ、雛森副隊長」
興味がなさそうに云えば、雛森は片手を大きく振り上げた。
バシッ
雛森は流歌の頬に平手打ちをした。
痛みはないが
殴られるよりはマシだ
「いきなり何するんです」
怒った表情を浮かべ涙を流す雛森は流歌を睨みつける。
「桃香ちゃんに何したの!!」
「別に何もしてませんよ」
「殺そうとしたんでしょう!?」
「……………………」
同じ質問の繰り返しに流石の流歌もしつこさに苛立ちを浮かべる。
「桃香ちゃんがどれほど怖かったか!!痛かったか!!人を傷付けておいてどうして平然と仕事していられるの!!罪悪感はないの!?」
「罪悪感ねぇ…」
深く溜息を吐いて面倒くさそうに雛森を見る。
「まさか彼女が本気で怯えたとでも思ってるんですか?」
「当たり前でしょう!?」
「僕は違いますね」
「!」
「自分がモテたいが為に周囲の気を引こうとしてるあの女は、まるで媚び諂う賤しい女狐です。手当たり次第に男を漁っては捨て、また漁っては捨てを繰り返す。自分に相応しい男じゃなきゃ許さない。彼女は悲劇のお姫様を演じている悪女にしか見えません」
「っ………!!」
カッとなった雛森は憎たらしそうに顔をしかめる。
「最低……ッ!!」
最低で結構
あんな女に同情する気はない
「副隊長を泣かしてんじゃねえよ!!」
横から割り込んで来た男が胸ぐらを掴んで流歌を壁に押し付ける。
ふざけんな!
こっちは女の子だぞ!
もっと優しく扱えよ!
「死ねよ、クソ野郎」
「あんたが死ね…クソ野郎」
冷たい声が聞こえた─────。
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