トライアングル

□第10章
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あの日

俺が陸上大会の会場に着いた時

すでにいつもの乙輝とは全然違ってた。


もう直ぐ本戦が始まる頃で予選のタイムを近くにいた先輩に聞いたら普段のタイムから1.5秒も遅れていた。


予選だから手を抜いたにしろありえないって秋元先輩は怒ってる。


なんとか本人を探し出して話をしたかったけど乙輝はスタートラインにいて話すことはできなかった。


でもここからでもわかる

どこか自信に満ち溢れてていつも俺がカッコイイって思ってる彼はそこにはいなくて

不安そうで周りの選手と違ってやる気もあまり見られなかった。


秋「乙輝!!
本戦はきちんと走れよー!!
…ったく。」


柏「朝からあんな感じなんですか?」


秋「あぁ。
昨日の練習まではこんなんじゃなかったんだけどな。
全くあいつのやる気のなさには呆れたもんだ。」


柏「乙輝…。」


本戦は案の定ドベ

見てても1位の人と凄くはなされてて秋元先輩が怒るのも無理はないと思った。


だっていつもの乙輝からしたらありえないから。


本戦が終わって戻ってくるかと思って目で追っていたら裏の方に入って行って慌てて追いかけた。


柏「だから言ったじゃん…。」


乙「……。」


柏「どうせ優子ちゃんのことが気になって集中できなかったんでしょ。」


乙「うるせぇ…。」


柏「それだけじゃないか…。
先輩からの期待とプレッシャー
あとはリクくんのことも気になってたんじゃない?」


乙「黙れ…。」



自分でも酷いこと言ってるなってわかってる


でも今の乙輝には本心をさらけ出してほしい


俺でもわかるってことは多分本人が1番身にしみてわかってる


今何が必要でどうしてほしいか。


柏「俺言ったじゃん
優子ちゃんに見に来てって言いなって。
でもそれを自分でやめたんだよ。
だから今こんなことになってる
違う?」


乙「黙れって言ってんだろ!!」



核心ばかりつかれてにムカついたのか乙輝は俺の胸ぐらを掴んで壁に押し付けた。


いつもの乙輝にやられたら怖かったかもしれない


でも今は全然怖くない


むしろ良かったと思う。


だって胸ぐらを掴む手や肩は震えてて下を向く顔からは涙が流れてたから。



柏「後悔してるんでしょ?
優子ちゃんをこの場に呼ばなかったこと、
先輩たちの期待に応えられなかったことに。」


乙「あぁ…
全部お前の言う通りだった…。
渡したくないのに、
あいつにそばにいて欲しいのに自分から突き放した…。」


柏「それで…?
今乙輝はどうしたいの…?」


乙「優子に…会いたいっ……。」



その言葉を聞いて俺は走り出したんだ。


いつの間にか雨も降ってきて最悪な天気の中1番嫌いなことをしながら。


でもこの時だけは走らずにはいられなかった

だってあんな親友の姿見てられないしほっとけないよ。






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