So long

□第1話
1ページ/3ページ




『進行はしています。』


「そうですか…。」


『今も部活はやられているんですか?』


「はい。」


『判断は任せます。
しかしやめた方が身のためですよ。』



月に一度の定期検診
毎回言われることは同じ

体に負担をかけない方が良い、
病気は進行している

そんなものは聞き飽きた

どうせ死ぬなら好きなように生きる。


俺が病気を発症したのは2年前

大会中に倒れて病院に運ばれた。


告げられたのは聞いたこともない病名

つまり治らない病ってやつ

今のところわかっているのは二十歳までは生きられないってことだけ。


この世に未練がないわけじゃない

けど今更どうしたって何も変わらないだろ?

だからもう足掻くのはやめたんだ。


俺がこの世に未練があるとすれば2つ

1つ目は大好きなサッカーができなくなること。


サッカーの名門校に受かって、

さらにその選抜に俺だけ受かった

先輩に混じって1人だけやらせて貰えるんだ

途中で投げ出すことなんてできない。


もう一つは…



「おチビ用事終わった?」



…大好きで一番大切な彼女の存在。



「うん。」


「サッカー少年も大変だねぇ。」



彼女の名前は篠田麻里子

兄貴の彼女の同級生で俺が中学卒業するときに告白したらまさかのOK

付き合って3ヶ月

麻里子の仕事があってなかなか会えないけどそれなりに充実してると思う。


因みに彼女は俺が病気ということは知らない

というか言ってない。


病気のことを知ったらきっと悲しむだろう…

麻里子のことを考えたら言えなかった。



「じゃあ行こっか。」


「どこに?」


「どこっておチビの家でしょ?
自分で言ったんじゃん。時間ないから家にしようって。」


「あ、わりぃ。
すっかり忘れてた。」


「ちゃんと覚えててよ。」



そう言われ頭をポンポンと撫でられた。


麻里子との身長差は13cm

見た目はどっからどう見ても姉弟

実際にそう扱われることも多い

彼氏としては嫌だけど俺はまだ伸びるから大丈夫

つーか絶対伸ばす!!


多分俺の人生で最後となる彼女

ずっと一緒にいたいし離れたくない

麻里子を残して死ぬことなんでできない

それができないのが一番辛い…。





次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ