So long

□第5話
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6月下旬

俺の所属する秋葉原高校サッカー部は夏大のため追い込んでいた。


強豪校、夏大という2つのキーワードにより練習量は半端なく増える。


朝練は毎日になり午後練は8時までと長くなった。


それでも変わらず俺とキャプテンのマンツーマンの練習は続く。


24時間常にサッカーのことが頭に浮かび正直彼女に構っている時間はなかった。



「はぁ…。」


「どうしたんだよ琉夜。元気ないぞ?」


「もう朝練ハード過ぎて疲れた…。」


「確かに琉夜でも2.3年についてくのは厳しいよなぁ。」


「3年がへばってるメニューを俺がやるんだぜ?何回ぶっ倒れそうになったか…。」


「まぁエースだからしょうがねぇじゃん?」



笑う佐玖に対し俺は意気消沈

疲れもあり落ちていく瞼に逆らえず目を閉じた。


次に俺が目を開けたのは3限目の国語の授業。



「そこ寝るな!」


「いってぇ…。」



教師から放たれた白いチョークがでこに当たり痛さで目が覚めた。



「大島君次のところ読んでくれる?」


「えっと…経済社会は…」


「おい琉夜っ。」


「え、なに?」


「それ社会の教科書っ。」


「あ…。」


「もういいわ。
宮澤君代わりに読んで?」


「は〜い。」



回りからはクスクスと笑い声が聞こえてきた。


まぁそりゃそうだよな

間違えて社会の教科書読むなんて俺でも笑っちまう。


だんだん覚醒していく頭でようやく先生が麻里子だということに気づいた。



(だからチョーク投げてきたのか…。)



久し振りに見る彼女の姿に自然と笑みが零れる。


最近はチョーク投げられても起きなかったし1週間振りくらいに見た。



「あれ…?」



嬉しくて麻里子を見つめているとある変化に気づいた。


久し振りに見るからなのかわからないけどほんの少し寂しげだった。


みんなから見れば変わらずポーカーフェイスなんだろうけど。



「会えなくて麻里子も寂しかったのかな…。」



いつも寂しかったりするのは俺だけだと思ってた。


麻里子は大人だからか俺にもポーカーフェイスでくる。


けど最近はそこから小さな変化を見つけることができるようになった。


昼にでも会いたいけど今日は先輩に呼ばれてるしな…。




「夜にでも電話してみるか。」



でこにできたチョークの跡を残したまま授業を終えた。





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