キミに伝えたくて

□学部旅行1
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「憐音遅いぜ?」

「どれだけ待ったと思ってんだよ」

「どうせまた彼女から離れられなかったんだ」


「うっせぇ
可愛いんだから仕方ねぇだろ」


「CHE-N聞いてくれ
明日は奈良で小さなライブをやるからな
今日はしっかりリハしてくれ」


『うぃす』


「それと憐音
あまり遅刻するな
彼女がいないことになってる以上
そこはきちんとしてくれ」


「わかってるよ」



そう、

俺の本性はCHE-Nの憐音

アイドルという夢を与えることが仕事。


彼女がいるなんて厳禁

バレたら辞めさせられる


でも俺が辞めさせられないのには理由がある。


それは人物自体を分けてるから。


アイドルをやってるのは
CHE-Nの憐音、

玲奈と付き合ってる一般の高校生は今枝俐空。


髪型や性格も変えてるし

化粧も多少してるから
今のところ誰にもバレてない。


知ってるのは優と才我。

バレたと言うよりは知られたって感じ。


仲間が俺のこと俐空って呼んでるのを聞かれちゃったんだよな。


「なぁ憐音」


「あぁ?」


「ライブ奈良でやるじゃんか
曲とかどれにする?」


「昨日やったやつで良い」


「了解」


CHE-Nは全員で5人

最年少16歳の翔

作曲家18歳の暁羅

作詞家19歳の海斗

メインボーカル20歳の輝

そして振り付け師&リーダーの憐音こと俺


このメンバーでもう結成五年目


安定もしてるし、
国民的アイドルと言われるようにもなった。

嬉しいことだよ


「トーク考えないと」


「翔はおしゃべりだから考えなくても大丈夫だろ」


「僕だってライブの時までおしゃべりじゃないよ!」


今日も翔は海斗にいじられてる。


いつもの風景に安息を漏らしながら眺めていた。


「でも奈良なんて久し振りじゃね?」


「確かにな
大学生とか旅行で行ってそうだよな」


「旅行…」


「どうかした?」


「いや…」


奈良って誰か行くって言ってたな…

誰だったっけ?


「あ…思い出した」


「何を?」


「玲奈学部で奈良と京都に行くって言ってた」



「よかったじゃん」


「彼女ライブ来てくれるかもよ?」


「じゃあラブソング入れねぇとな」


ニヤニヤして海斗は選曲を変えた。


余計なこと言っちまった

でも玲奈に会えるんだったらいっか。


「よし、今日のリハは入念にやるぞ」


「おうっ」


「彼女の前ではカッコつけたいもんな」


「お前を目立たせてやるよ」


「バレたらマズいですけどね」


「気持ちだけでも伝えてやろうぜ」


みんなが俺のために協力してくれる。


全く、

良い仲間を持ったもんだよ。
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