トライアングル

□第8章
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試合も終盤に差し掛かりリクがシュートを決めて1対1

残り20分というところで雨が降ってきた。



敦「あれ、雨?」


佐「降ってきちゃったか〜。
午後も天気良いって言ってたのに。」


優「土砂降りにならなきゃいいけど…。」



でも私の思いとは反対にどんどん雨脚は強くなっていく


乙輝傘なくて大丈夫かな?

あっちの大会会場に屋根なんてないだろうし…。


私がそんなことを考えていたら突然背後から肩に手を置かれた。



佐「り、りんちゃん!」


柏「優子ちゃん…。」



そこに立っていたのは雨に濡れ息を切らした佑紀くんだった。



柏「優子ちゃん急いで乙輝のとこに行ってあげて。」


優「え?」


柏「本当は乙輝大会だったんだ。
レギュラーでさっきまで走ってたんだよ。」


優「な、なんで…。」



乙輝は今日出ないから来なくていいって言ってたのに…。



柏「優子ちゃんがリクくんのこと好きって知ってたから言わなかったんだ。
こっちの応援これるように。」


優「乙輝…。」


柏「決勝で敗れて今落ち込んでると思うんだ。
だから今だけでいいから行ってあげてよ。」



佑紀くんにそう言われて私は考えもせず走っていた。


早く乙輝のとこに行きたくて

落ち込んでるあいつが目に浮かんでジッとしてなんかいられなかった。


私がリクのこと好きって知ってたからってなんで何も言ってくれないの?


今日出ること知ってたら例えいけなくても応援くらいしてあげられたのにっ


心の中であいつに対する不満をぶち撒けながら私は走った。



やっとの思いで会場に着くとそこに他の選手の人はいない

役員の人もうちの学校の人も誰もいない


でも私の探してる人はすぐに見つかった。


観客席の真中

座り込んでジッと会場を見つめてる1人の選手

それが乙輝だって一目でわかった。


私はそっと近づいてずぶ濡れの頭に傘を差した。


乙「なんで来たんだよ…。」



乙輝はこっちを見ることもしないで一言そう言った。



優「佑紀くんが知らせてくれて…。」


乙「リクの試合はいいのか?」


優「途中まで見れたから大丈夫…。」



乙輝の口から出る言葉はどれも私を心配することばかり


でも私が心配なのは乙輝自身


さっきから一度もこっちを見ないし表情も一切変えない


遠くを見つめたまま動かなかった。




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