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□少女漫画
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入学式の日
私が一目惚れしたのは
学年…いや、学校一モテる。
隣のクラスの檜佐木修兵。

学校で一番人気のある檜佐木君と
平々凡々な私
関係だけで言ったら
私は少女漫画の主人公だ。

最後はもちろんハッピーエンド。

なんて。

それはあくまで
少女漫画の中だけの話で、残念ながら
現実はうまくいかないもの。

入学してから一年。
運命的な出会いどころか、
接点すらない。

遠くから眺めるだけ。

それでも、心の何処かで
いつか。
を、期待している私が居た。

そして、
私にもチャンスが巡ってきた。
二年生になって
檜佐木君と待望の
同じクラスになったのだ。

一日中、檜佐木君を見ていられる。
それだけで幸せだった。

そんなある時
席替え。
漫画だったら
隣の席になって
運命?
って…

でも、
現実はうまくいかなくて
檜佐木君とは何の接点もない
窓側の前から二番目。
檜佐木君は
私より後ろの席。
授業中、こっそり眺めることも
許されなくなった。


折角、同じクラスになれたのに
一言も話せないまま
二学期の終わり頃。

『授業暇。』

授業中、いつものように
友人から手紙が回ってくる。

『勉強ついていけない(笑)』

直ぐに返事を書いて
後ろに回す。

暫くそれを繰り返していると…

トン。

後ろから、回していた手紙とは違う
丸められた紙が
私の机に飛んできた。
後ろを振り向くと
目があったのは
檜佐木君。

口パクで「開けてみて」
と言われ、開けると…

『お前、俺の事好きでしょ?』

もう一度檜佐木君の方を振り返ると
檜佐木君は笑っている。

顔が熱を持つのが解った。
それでも、
丸められた紙に
勇気を出して返事を書いた。

『うん。』

すると、直ぐに返事が回ってきて

『じゃあ、俺を惚れさせてよ。』

後ろを振り返ると、
檜佐木君が意地悪そうに笑っていた。

何て返事をして良いか解らずに
そのまま、机に突っ伏した。
檜佐木君が、何を思っていって居るのか。
きっとからかっているんだろう。

考えれば考えるほど、
悪い方へと考えが行ってしまった。


そして、

気が付くと
私は寝てしまっていて
起きると、もう授業が終わって
誰もいない。

陽が傾いて、教室は
茜色に染まっていた。

いっそ、さっきの手紙も
夢ならいいのに。

そう思ったけど、
私の机の上には、しっかりと
先ほどの手紙が置いてあった。

その手紙も一緒に、
鞄に押し詰め、
帰り支度をしていると、

ガラガラ…

教室のドアが開いて
入ってきたのは、
出来れば今は会いたくなかった人。
檜佐木君だ。

私は檜佐木君を見ずに、
避けるように教室を出ようとする…

「なぁ、返事は?」

教室を出るところで
呼び止められる。

「…。」

黙っていると、足音が近づいて…

「返事。」

無理矢理顔を
檜佐木君の方に向けさせられる。

恥ずかしくて目を反らした。

「おい。」

その声は冷たくて、
恐る恐る檜佐木君を見上げると

息がかかるくらい
すぐ近くに、檜佐木君の顔。

一瞬の事だった。

檜佐木君と私の唇が触れた。

直ぐに、私の顔が熱を持つのが解った。

檜佐木君は、怪しげに笑うと

「待ってるから。」

そう言って、教室を出ていった。

何が起こったのか
暫く理解できず、その場に固まってた私。
『待ってるから。』
檜佐木君の言葉が木霊する。

それは…
少しぐらい期待しても良いんだろうか。
自惚れても良いのだろうか。

少女漫画のように…
とはいかないけど…

貴方が待っていてくれるのなら

私は貴方を追いかけたい…


この先が
ハッピーエンドであると
信じて…




END

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