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□角砂糖
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煙草と珈琲の匂いで夢の世界から呼び戻される。
昨晩、しっかりと抱き締めていたハズの阿近の温もりはなく、
重たい目蓋を開ければ、
まだ、仕事に行くまでに二時間はあるというのに、
死覇装に身を包んだ阿近が、
煙草をふかしながら、珈琲を入れている。
何度見てもその姿には見惚れてしまう。
「起きたか?」
私に気づき、珈琲の入ったカップを机に置いて此方にやってくる。
その声が少し掠れてるのは毎朝の事。
朝の阿近の声はいつもより少し低くて掠れている。
そしてもう一つ。
「おはよ。」
そう言って、抱き付く阿近。
身体中煙草と珈琲の匂いに包まれる。
私も無言で抱き締める。
朝の阿近は普段の何倍も甘い。
きっと、こんな阿近を知ってるのは
私だけなんだろうな。
なんて思うと自然と笑みが零れた。
「何笑ってんだよ。」
「別に。」
顔を見合わせ、もう一度唇を重ねた。