宝物

□雪うさぎ
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そんな一くんを見て、左之さんはニヤリと笑いながら言った。




原「何って…紗邏襲ってんだよ。お前は千鶴の所行ってろ。」




っと一くんを見るため上げていた顔がまた私の顔に近付いてきた。




斎「!左之!」




原「おいおい。勝手過ぎるぜ?こいつほっぽいて最近千鶴といたんだろ?」




斎「それは…」




原「こいつ大事にしないなら俺が貰う。」




斎「っ!ダメだ!俺は…紗邏じゃなければ…」




軽い言い争いになる。
一くんも左之さんも睨み合っている。




すると、左之さんは何を感じたのか私の上からどいて私を起き上がらせた。




『えっ…?』




原「今しかねぇーぞ…斎藤に本当の思い伝えんの…」




私の耳元でコソコソと喋る左之さん。




原「言ってこい。それでダメなら…俺が貰ってやる。」




最後にはお得意のニヤリとした顔で私を見つめ、ほら、行け!っと私の背中を押した。




斎「……」




『……』




左之さんは大丈夫だと言ったけど…気まずい…。
それにいつの間にか左之さんいないし…
悪い事しちゃったな…左之さんの部屋なのに…
なんて思ってると一くんが話しだした。




斎「…その…紗邏…」




『はい?』




斎「すまなかった…」




『……』




それは何に対する謝りなのか…
どんな気持ちでの謝りなのか…




斎「あんたに…その…あまりかまってやれなくて…」




『……しょうがないですよ。一くん、優しいもん。千鶴に気、使ってたんでしょ?しょーがな…「しょーがなくない!」』




私の言葉を遮って、一くんは私に話す。




斎「しょーがなくない…。俺はお前に甘えていた部分があったんだ。雪村の事を分かっていると思っていたから…。」




っと一くんは話す。



斎「……あんたの…紗邏の本当の気持ち、教えてくれ…」




私を真っ直ぐな目で言う一くん。
私は飲み込んでいたはずの言葉を吐き出した。




『……本当は…寂しかった…。恋仲になってからも私でいいのか不安だったのを一くんが大丈夫って言ってくれてたのに…。千鶴が来てからそんなそぶり見せないで…千鶴ばっかで…
私、捨てられたのかな…って。ずっとずっと…不安だった…』




いつの間にか目からは止まることを知らない大粒の涙が流れていた。
そんな私を見て一くんは私を強く抱きしめた。




『は、じめ…くん?』




斎「すまなかった…。あんたがそんな事思ってたなんて知らず…。」




ギュッと…力は強いが何だか大切なものを守るかのように包み込まれてる…
すると、一くんはだが…と言葉を続けた…




斎「俺は紗邏じゃなきゃダメなんだ。
俺の恋仲の相手は最初も最後も、紗邏がいい。」




『っ!』




真っ直ぐに見つめる一くん。
あぁ…私は何を思っていたのか…。
何故、一くんを分かってあげられなかったのか…。




『一くん…。大好きだよ…!』




私は体を一くんに預けて言った。
一くんも俺もだ。と言うと同時に暖かく柔らかいのが私の唇に触れた…




―――――――――――




『千鶴〜!』




千「っあ、紗邏さん!」




次の日。
紗邏は外に出て雪村と雪遊びをしていた。
すると、俺の方をちらっと見ると雪村に耳打ちをする。
雪村はニッコリと笑うと紗邏を連れて草かげに行った。




原「よぉ!斎藤」




斎「左之か…」




原「何だよ…左之かって…つめてぇーな…」




頭を欠く左之を横目に見ると左之は真面目な顔付きで俺に話しかけた。



原「…紗邏の事、大切にしろよ。強くて男前だけど、あれでも一人のか弱い女なんだからな」




斎「……」




原「千鶴の事、気使ってんのは分かるが紗邏との時間を大切しろ。」




斎「あぁ…」




原「また泣かせたら、次はまじで奪うからな。」




斎「フッ…。もうないだろうな。そのような事。」




原「ならいいぜ」




斎「感謝する。」




俺は左之に礼を言う。
左之はニヤリと笑うと何処かへ行ってしまった。
と、同時に次は紗邏が俺の所へと来た。




『は〜じ〜めくん!』




左之がいなくなったのはこれを知っていたのか…。と思うくらい同時来た。




斎「どうした…」




『あ、あのね?その…』




と、何とも紗邏らしくなくはっきりしない。




斎「?どうしたのだ?」




『あ、あのね?私、千鶴みたいに器用でもないし、女らしくないけど…』




斎「?」




顔を赤くした紗邏に俺は訳が分からなくなる…




『それでも、私と恋仲になってくれますか?』




驚いた…。
紗邏がこう言うなんて…。
後ろで手を組んでいる紗邏に俺は




斎「当たり前だ。俺はあんたでなければならないんだ。」




そう言うと紗邏はニッコリ笑うと後ろで組んでいた手を前に持ってきた。








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