唄の「オト」
□パートナー
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「おい、お前一人でも大丈夫なのかよ?……っつーかお前は歌えたりとかすんの?」
龍也さんがクラスから出てすぐ隣の来栖くんが話しかけてきた。お前と呼ばれたのが少し嫌になって少し声を低くして答える。
『"お前"って名前じゃないけど。歌に関しては教えてもらってたこともあるから多少は大丈夫』
「えっと名前……そうだ、冬鴉だったな!!あーでも名字で呼ぶのあんまり好きじゃねーから舞兎ってよぶから。……でも、舞兎は一人ってあの学園長も理不尽だよなぁ。一人でもできるって言っても限界あるだろ普通」
なぁ、と私に問い掛ける彼の前にたくさんの女の子達が来た。
「ねぇ来栖くん、冬鴉さんと話すばっかりじゃなくてさぁ私たちとも話そうよ〜」
「来栖くんどこで空手習ったのか教えてほしいなぁ!!」
「え、俺まだ冬鴉と話始めたばっかなんだけど……」
どうしようか迷っているのか私に目を向けた来栖くん。いや、今私の方みたら絶対ダメだって。ほら目の前の女の子達から有無を言わせないくらい恐い視線が私に向けられてるじゃない。
はぁ…とため息を1つついてから口をひらく。
『別に私のこと気にしなくていいから。来栖くんは女の子達と話して来なよ』
「いや……まだ何も話してないし……」
まだ納得できないのかわかったと言わない来栖くん。それでも周りにいた女の子達が私の言葉を聞いてすぐに目を光らせた。
「ほら、冬鴉さんもこうやっていってるしさぁ行こうよ来栖くん!!」
「ここの学園の食堂ってすっごくキレイなんだって!見に行ってみようよ」
「あぁ、そんじゃ食堂行ってみるか!!じゃあまた明日な舞兎」
たくさんの女の子達に囲まれて来栖くんはクラスから出ていった。ついさっきまであの集団の中にいたなんて考えられないし、もう二度とあれには近づきたくないと思う。
だからこそ自己紹介の時にいた神宮寺さんが苦手なんだけど。
折角一人になることができたから、早く寮へ帰って7月のテストへ向けての作曲をしようとすぐに教室を出た。